世界に先駆けた「超高齢社会」への挑戦 ―KGRIが描く2040年の日本のデザイン―

世界に先駆けた「超高齢社会」への挑戦
―KGRIが描く2040年の日本のデザイン―


Yasui
安井 正人(KGRI所長 : 医学部教授)

Toriya
鳥谷 真佐子(健康寿命延伸プロジェクト サブリーダー : KGRI特任教授)

Asai
浅井 誠(革新ソフトマター統合プロジェクト(RIZΣプロジェクト)サブリーダー : KGRI特任教授)

Kawashima
河嶋 春菜(プラットフォームと『2040年問題』プロジェクト サブリーダー : KGRI特任准教授)


安井:慶應義塾大学には現在、10学部14研究科があります。学問が進むと段々と専門性が高くなり、学部や研究科を越えた交流が疎になってきます。そこをなんとか打開してコミュニケーションを活発化させるのが、2016年に設立したKGRI(慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート)の使命のひとつです。 また「学問の成果を以て社会に貢献する」という、慶應義塾の創始者である福澤諭吉先生の実学の精神を率先して実行したい、そういう思いで社会的課題に学際的且つグローバルに取り組んでいる場所でもあります。

Yasui_image

2020年度まで、このKGRIの中で基軸プロジェクト(以下、PJ)として長寿・安全・創造という3つの大きな領域をクラスターとし、研究を推進してまいりました。この成果に基づいて、2021年4月からはポスト基軸PJとして「2040独立自尊PJ」を立ち上げました。

社会的課題の中でも、2040年問題は最も重大かつ重要な課題ではないかと考えています。申すまでもなく日本は、2040年には超高齢社会を迎えます。超高齢社会のトップランナーとして日本がこの危機をどう乗り越えていくのか、世界中が注目しています。そこで我々慶應義塾の教員・研究者、そして学生が一丸となってこの2040年問題に向き合い、独立自尊はどうあるべきかを改めて考え実現するべく、3名の新しいKGRI専任の特任教授・特任准教授をお迎えしました。鳥谷真佐子先生浅井誠先生河嶋春菜先生です。3人の先生にそれぞれが担当するPJの概要、そして2040年独立自尊PJにかける思いを伺いたいと思います。

最初に、2040年独立自尊PJの3本の柱の1つである「健康寿命延伸PJ」を推進する鳥谷先生からお願いします。

俯瞰と共感から創発を生み出す「システム×デザイン思考」

鳥谷:健康寿命延伸PJでは、超高齢社会を迎える2040年の健康な暮らし方、働き方を実現させるための社会システムやサービスを作っていきたいと考えています。そこで「システムデザイン」の手法を活用し、2040年の社会像や、至るまでに生じる課題、必要となるシステム、サービスを考えます。

システムやサービスの実現には技術開発が当然必要ですし、それぞれの技術の繋がりを考えることも重要です。加えて大事なのが、経済学的な観点です。超高齢社会で国際的な競争力を保つには、健康であると同時に社会への経済的な貢献も求められます。理想的な仕組みから生まれたシステムやサービスが、ビジネスとして継続できるのかも考えなければなりません。また、新しい社会システム作りには、政治やガバナンスの変化も伴います。

Toriya_image

このように複雑に関わりあう関係性を一体的に捉えながら、同時に細分化した個々の部分についても具体的にシステム設計し、実際の開発へと繋げる必要があります。進めるにはカバーする範囲があまりに広く、そして複雑に見えるかもしれません。ここで用いるのが、前所属であるシステムデザインマネジメント研究科(SDM)で研究教育していた「システム x デザイン思考」です。「システム x デザイン思考」はシステム思考やシステムズエンジニアリングといった手法を用いて俯瞰的、系統的に物事を捉える思考と、対象となる人との共感を大事にする人間中心の考え方であるデザイン思考の両方を融合させた、慶應義塾独自の思考方法です。これを活用することで2040年に向けた社会システムの理想像をデザインしていきます。

もちろん、既存の仕組みはなかなか変わりませんし、様々な障壁もあります。まずは最初に切り込みやすい突破口を見つけて、部分的に仕組みやサービスをデザインしつつ、徐々に全体へと波及させたいです。最初はグランドデザインを意識しつつ各部分を考えるのですが、ここで部分だけを考えていてはいけません。必要となるパーツが適所にあって相互に機能しあい、初めて価値が発揮される「創発」の状態を、作り出していきたいと思っています。当然1人ではできないので、様々な専門家の方々や企業、自治体の方々にも協力していただく必要があります。この「仲間集め」が非常に重要です。このままでは2040年を困難な状況で迎えることが見通せるのですが、今みんなが自分ごととして捉えているかというと、そうでもありません。しかし、今動かねば状況は好転しません。自分たちに今何ができるのかを、一緒に考えてもらいたいと思っています。

深刻な言葉で言い続けても人は集まりません。そこで学問の楽しさを見出せるような仲間作りをするために新しいメディアを作ろうという話が出ています。ラジオを聴くような気軽さで新しい発見ができたり、いつの間にか発言できたりと、自然と参加できるような場を想定しています。デザイナーや構成作家の方などと一緒に話を進めているところで、すでに研究者だけではとても発想しないような話も出ています。全く異なる分野との出会いから何か起こりそうな気配を感じています。ぜひ学生にもどんどん加わってもらうことで、特有のフレッシュな視点を取り入られるといいですね。


安井:ありがとうございます。では次に「革新ソフトマター統合PJ」の浅井先生にお話いただきます。

ソフトマターの可能性:生体と機械融合の夢

浅井:我々のPJでは、2040年問題を技術の側からどう切り込もうか考えます。世界に先立って超高齢社会へ日本が突入するときには、社会システムそのものをどう維持するのかは国家的問題です。これを技術側からどう捉えるかを考える際に我々がキーワードにしているのが「健康寿命の延伸」です。人々が長寿を元気で全うする社会をどう技術的に実現するのかを考えていきます。

現在の社会で健康寿命の延伸を支える技術として挙がるのが、IoTを活用したヘルスケア分野です。簡単に装着して自分の体をモニタリングできるような様々なデバイスがすでに市販されており、安価に手に入れられます。ベンチャーから大手の企業までが、このレッドオーシャンの中で勝ち抜いていこうと世界中で鎬を削っている状況です。

Asai_image

そんな中我々は、健康寿命の延伸を実現するための新技術とは何かを考えました。先ほど取り上げたデバイスは、全て金属や半導体がベースになります。これを直接体の中に取り込んだり体と一体化させたりすることは事実上無理があり、我々はここに大きな障壁があるという結論に至りました。そして、次のブレイクスルーは、これまで我々が20世紀から21世紀にかけてサイエンスの分野で積み上げてきた、個体物理学のもたらした結晶とも言える技術たちをどうやって、新しい技術を介して生命という現象の中に取り込んでいくか、だと考えています。これを実現する技術として注目されるのが、「ソフトマター」です。

従来の金属・半導体といった硬い物質を、我々の世界ではハードマターと呼びます。しかし、視野を広げて自然界を見渡すと、植物や動物といった様々な生命体は、ハードマターでは構成されていません。生命体が自発的に作りだすものは、DNAやタンパク質、高分子など炭素原子が数珠繋がりで繋がっているような材料でできています。これらの総称が、ソフトマターです。自然界はソフトマターを巧みに活用して物質世界を作っており、このソフトマターの物質世界を司る原理原則を探究するのがソフトマター工学やソフトマター物理学という比較的新しい学問領域です。この学問領域の知見を使えば、従来のハードマターを駆使して現在我々が享受している技術を、我々の体に自然と融合したり体の中に取り込んだりして生体の一部として活用させることができるだろうと考えています。

このソフトマターというチャレンジングな分野をPJとしてどうやって世界的に牽引していけるだろうかと考えるには、2040年問題という大きな社会課題からバックキャストした視点が重要になります。生体と機械の融合は、数年から10年程度のスパンでは実現できないことも多いでしょう。しかし2040年やその先の社会を考えるときに、我々サイエンティストとしては、SF的な世界に夢描くような課題を今から真剣に議論して、そして実現に向けた道のりを描かねばなりません。科学者として心躍るようなこの課題を中心に据えて、医学、材料工学、ロボティクスなど、様々な分野を融合した方々を集めて走り始めたというのが革新的ソフトマター統合PJ、通称「RISΣ(ライズ)」PJです。英語では、「Revolutionary and Interdisciplinary Soft-matter integration」と書き、その頭文字をとってPJの通称にしています。最後の「integration(統合)」はiから始まるので、略称ではその代わりに形がEと似ているシグマ記号(Σ)を使っています。integrationという単語には、様々な才能が集まって統合して取り組むという意味が込められていますし、シグマ記号は数列の「総和」を表す際に用います。また、riseという単語自体は立ち上がるという意味を持ちます。若手研究者たちが国家的な社会課題に対して危機意識を持ち、立ち上がって未来を変えるというイメージがこの言葉に託されています。

ここで国家的な危機というネガティブな言葉を使いましたが、鳥谷先生も先ほどおっしゃったように、むしろこの機会を逆に捉えて楽しそうな世界を提案できるようなPJにしたいと思っています。研究者はどこか建物の中で難しいことをしているだけではいけません。研究者自身が社会の中に出向き、思い描く未来を一般の方々にシェアして、対話して、ときにはいただいたフィードバックから考えを変えながら社会へ影響していく必要があります。多様な人を巻き込んで、まさにintegrationしながらPJを遂行していきたいと思っています。


安井:次に3つ目の「プラットフォームと2040年問題PJ」を担当される河嶋先生、よろしくお願いします。

プラットフォームの可能性と課題、そして法の役割

河嶋:このPJでは、法学と政治学の観点から独立自尊や2040年問題に取り組みます。法学の観点から何が一番問題かを突き詰めてみると、これからは「みんな」にとって良いものを作る社会ではなくて、誰にとっても良いもの、どんな個人を取り出してもその人にとって良いものが確保されている社会が望ましくなる点だと思います。医療の分野で言えば、個別化医療と言われるものが近いかもしれません。多様性にあふれた社会に対応する技術やシステムが求められるのはまさに、個人の尊厳を重視する独立自尊の考え方につながるのではないでしょうか。

Kawashima_image

2040年になると、高齢者やそもそも自立の手段をもたない弱い個人など、尊厳を守ることができない状態におかれる人々がより顕在化してくるといわれています。それに対して示されている解決策の一つが、SNSやWebニュースサイトなどの「プラットフォーム」です。フィジカルな空間ではなし得なかった個々人への配慮が、プラットフォーム上ではできるようになってきています。少し具体的に言いますと、例えばSNSのおかげで、今まで全く政治に対して発信力を持たなかった人々が発信力を持つようになりました。典型例が「アラブの春」です。多くの人たちがSNSを通じて集まり国内外に政治的な主張を発信し、政権を打倒するまでに至りました。健康の分野でも生活習慣をアプリやデバイスを通じて集積していくことによって、自分に合った医療や介護サービスを提案してもらえるようになりました。このように、プラットフォームが私たちの生活の様々な部分で光となるような提案をしています。

ただ、プラットフォームには影とみられる部分もあるかもしれません。SNSの例で言えば、プラットフォーマーの基準で投稿が削除されたりアカウントがBAN(凍結)されたりしてしまうなど、言論空間を抑制される事例があります。また、国境を越えて展開するプラットフォームがユーザーのデータを外国政府などに渡しているのではないかという懸念も生じています。ところが、今のところプラットフォームに対する包括的なルールは、世界を見渡してもありません。

そこで本PJでは、プラットフォームの光の部分を最大限に引き伸ばして、影の部分を抑制するようなルール作りのための基礎的な考察、提案をしたいと考えます。例えば、従来プラットフォームはGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)の例に見るように医療から金融まで様々な分野に手を伸ばしているので、縦割りのルールではなく別の方法でルール作りを考える必要があります。また、国、プラットフォーマー、ユーザーの誰がルールを作るのかも考えねばなりません。もちろん分野毎の個別的な事情も考慮せねばなりません。非常に大きな対象が相手のPJだからこそ、文理融合で様々なテクノロジーを開発する皆さんや健康に関するシステムを作る皆さんと一緒に協働して進めることが肝心だと思っています。

具体的には、プラットフォーム企業や外国研究者とも連携をし、その過程では、学生とも一緒に考えていく予定です。すでにその一環として2021年度は寄附講座(「プラットフォーム経済と持続可能社会」)を行っています。もちろん、残り2つの柱となるPJとも一緒に研究を始めようと議論しているところです。


安井:それぞれのPJですでに学際的な取り組みや共同研究が進みはじめていることがお分かりいただけたのではないかと思います。さらにこの3つのPJを有機的に連携して大きな2040独立自尊PJを展開するための工夫というか、アイデアや具体的なプランに関して少しお話しいただけますか。

image1

バイアスを可視化し、多様性の中で対話を

浅井:3つのPJがそれぞれ短期的な目標にフォーカスしてしまうと、当然バラバラになります。3つのPJをいかに統合するかを考える際には「2040独立自尊PJ」というPJを包括する名称をみんなで咀嚼する必要があると考えます。

このPJの面白さは、世界中全員を巻き込めるような大きな社会課題への挑戦だという点です。超高齢社会の到来は地球上に住む全員が自分ごとになる社会課題です。この大きな社会課題からバックキャストして3つのPJが立ち上がっているということを全体でシェアすることが肝心です。そうすれば、各PJで日々議論していることが最終的に同じ目標へと帰着するんだという共通意識が生まれると考えます。

どのように進めるかは未定ですが、一つは先ほど鳥谷先生がおっしゃっていたような新しいメディアでの情報発信があります。我々はこんな未来を描いているんだというメッセージを多様な方々に対して届ける意識を持つことで、全員が大きな目標を自分ごととして捉えられるのでは、と思っています。


安井:研究がどんどん細分化し、専門性が高まる中で、全体のデザインやシステム的な考え方を浸透させるのは、簡単なようで意外と難しいことと思います。鳥谷先生、そのあたりの戦略はどうですか。


鳥谷:非常に複雑な問題を考えるとき、いろんな視点から見ることは非常に大事です。それぞれが専門のバイアスというものを持っていますから、一つの学問からは一つの切り口でしか切り込めない。そこで、それぞれが持つバイアスを持ち寄ることで、全体像が見えるのではないかと考えます。加えて、可視化するということも大事です。システムズエンジニアリングは、多様な背景を持つ人たちと設計をする際に、コンセプトや詳細を共有するため、共通のルールで図を書いて考えを共有できるよう発展してきたものです。全体像を捉えた上で可視化することで、抽象度のコントロールが可能です。全体をざっくり捉えた図も描ければ、詳細を知りたい場合はもっとクローズアップして見せることもできます。全体像も詳細もあって、さらに全体と詳細の関係性もきちんと描かれている図ができれば、それぞれの専門的知見を持ち寄って、何か統一的なものが作りやすくなるのではないかと考えています。


安井:河嶋先生がおっしゃっていた、誰にとっても良い社会を一人一人が自分ごととして考えるって非常に重要なことですが、そういう社会を実現していく上で、法学的な観点からみて、何がポイントになるのでしょうか。


河嶋:

国家を作っているのは一人一人の個人であるということです。憲法は、個人の尊重、つまり個の重要性を基本的な理念にしています。その意味で、このPJメンバーは、スタート地点からまさにダイバーシティを体現しています。文系・理系という学問的なダイバーシティだけではなく、例えば今妊娠中の私のように、このPJには様々なライフステージ・研究ステージにいて、様々なバックグラウンドを持つ研究者が集まっています。そのような研究体制は、個々人をとりこぼさない社会に提言を行う研究を行うために非常に有益なのでは、と思います。

また、慶應義塾の学生はすごくエネルギーに満ち溢れていますし、教員の側にも、学生は機会を与えれば絶対にそれを実にしてくれるという信頼があるように感じました。一人ひとりの個人のための社会をつくっていくための研究ですので、PJそのものに、多様な人々がかかわっていくことも重要かと思っています。


安井:慶應義塾には「半学半教」という言葉があります。お互い学び合い、お互い教え合う、という考えです。2040独立自尊PJをこれからどう進めていくかを考えるにあたり、今河嶋先生がおっしゃった「若い人の力をどう取り込むか」が非常に重要なポイントになると思います。若い人から見たときに魅力的なPJにするにはどんな工夫が必要でしょうか。

学生の共感と参加がもたらす社会変革

浅井:関わる先生に対しては、所属の研究室の学生さんたちが積極的に関わるよう促しています。こうして元から学生さんがたくさん関わる設計にしているのですが、それだけだと研究に直接関わる人だけが参加する形になります。

そこで、もっと大きな視点で2040年問題を考えてみます。20年後の2040年、今の大学生は40歳前後になるわけです。まだまだ社会で活躍しなければならない世代ですが、その頃には人口減で社会がボロボロになってしまうかもしれない。この危機感は、当然彼らも自分ごととして感じられる話のはずです。

そこで、このPJで目指しているものを非常にシンプルに、ごく短く1分程度の言葉にして多くの人へ伝えることで、自分たちもそこに参加したいと思ってもらいたいと考えています。それは教員とか研究者だけでなく、もちろん学生も対象です。行うには、我々がちゃんと理念を言葉に落とし込んで伝えられるかにかかっています。


安井:まさに、鳥谷先生もおっしゃっていた、デザインは共感だというあたりにつながるお話ですね。20年後、確かに頭ではわかっているけれどもなかなかピンと来ずに自分ごとになり得ないというのが現状だろうと思いますが、どうやって若い人に共感してもらい、一緒に未来をデザインしていくのか。そのあたりどうでしょう、鳥谷先生。

KGRIのチャレンジ:出会いと発見から課題の実現へ

鳥谷:共感するには対象のことをよく考えて知る必要があります。となると、今20代の学生さんがすぐ高齢者の生活を共感するのは難しいかもしれません。ただ一方で、何か難しい問題を解決するときに学生さんのフレッシュな視点が非常に役だったりもします。30〜60代が思い付かなかったような切り口や視点、ハッとするようなことを見つける、そんな部分で関わってもらうことはできるのではと思います。例えば、毎年ミラノで行われる世界最大級の国際家具見本市(ミラノサローネ/デザインウィーク)は、家具を見せるだけではなく数歩先を行く新しいコンセプトの製品を提示するために、世界中から企業やデザイナーが集まる祭典です。これまでSDMはいろんな学生の発想を使って社会課題の解決を目指す製品を企画・展示してきました。このときに学生ならではのアイデアがいくつも出てくるんです。今、SDMと共同で行うPJでは、2040年を見据えて超高齢者社会で必要なヘルスケア課題の解決に向けた製品を学生さんと一緒に企画して展示できたらいいね、という話をしています。

もちろん国際的な人たちの生の感想を聞くこともできますし、中には日本人が思いもよらない感じ方があるので非常に面白いんですね。このような場所に理工学系とか医学部の学生にも参加してもらって、学生の視点から社会課題の一端を解決するようなサービスや製品を考えていくことも、ぜひやりたいです。そこで出てきた仕組みや製品は、担当するPJで考えるシステム全体の中のどこに位置付け、また全体で捉えた時に個別に持つ以上の価値をどう発揮させられるかを考えていきたいと思っています。


安井:若い人が自分ごととして考えるって非常に重要なことで、自分の考えや作ったものを発信して評価される場が国際的にあれば、彼らのモチベーションも非常に上がると思います。このPJを介して学生さんが能動的に関われる場をどんどん増やしていければなと思っています。

最後になりましたが、みなさんからこのPJにかける思いとメッセージをお願いできればと思います。


浅井:過去の経験も振り返っても、このようなPJはありませんでした。特に、比較的アーリーキャリアの若手研究者たちがこれだけ自由度を与えられて、そしてKGRIという特区に近いような場所で自由な環境を与えていただけるということは、前代未聞の取り組みだと思っています。ここから本当に社会を変えていくようなインパクトをぜひ出していきたいと思っています。


河嶋:このPJは、すごくいい滑り出しをしていると感じます。浅井先生や鳥谷先生とは日々意見交換していて、すでにこれからどんなことができるかワクワクしています。具体的に研究をこれから進めていくわけですけれども、これから学生の皆さんや企業の方々とともに研究を進めるなかで、新たな発見や挑戦をしていきたいです。どうぞよろしくお願いします。


鳥谷:非常に大きな課題、仕組み、システムを考えようとしているので、どうしてもいろんな分野、年代の方々に関わっていただく必要があります。難しさがある一方でとてもチャレンジングな意義あることだと思いますし、そうした場を与えていただいたというのは、非常に光栄です。ここから、ぜひ理想を語るだけではなく具体的にこういう形に落とし込めるんだということを見せていければいいなと思います。


安井:みなさんありがとうございます。Encounter (出会い)って、非常に大事な最初のきっかけになるなと、私自身経験してきました。出会うことによって刺激が生まれ、成長の大きなきっかけを作ると思っています。このKGRIが、そんなきっかけ、そんな場を作りながら、より魅力のある研究所として発展していくことを願っています。特に若い人は、魅力のあるところに集まりますので、研究や教育を通してどんどん発信していけるような研究所でありたいと思っております。本日はありがとうございました。


image2

撮影:岸 剛史

2021年4月22日 取材 ※所属・職位は取材当時のものです。