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【開催報告】第5回 慶應-スタンフォード Webinar(2021.10.16開催)

2021.10.22
第5回 慶應-スタンフォード Webinarを開催

2021年10月16日(土)に、第5回 慶應-スタンフォード Webinarを開催しました。今回のテーマは、Transdifferentiation by Manipulating Transcriptional Factorsでありました。Stanford School of Medicine, Department of Anesthesiology, Perioperative and Pain Medicine(SLDDDRS)、医学部生理学教室、Keio University Yagami Data Security Labが主催し、KGRI、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン (LINK-J)、科学技術振興機構 (JST)が共催しました。ウェビナー形式で約100名の参加がありました。

先ずは、西村俊彦教授(Stanford University School of Medicine, SLDDDRS)と岡野栄之教授(慶應義塾大学医学部、Head of International Advisory Board of SLDDDRS)がOpening Remarksを行い、この慶應-スタンフォード Webinarの意義と今回のWebinarのテーマである、体細胞からの直接誘導法についての説明がなされました。


引き続き、4名の演者による講演が行われました。

  1. 基調講演1では、スタンフォード大学医学部Departments of Pathology and Chemical and Systems BiologyのMarius Wernig教授が、講演する予定であったが、緊急の要件により、代わりにJustin Jana博士が講演を行った。Justin博士は、主にマウスの線維芽細胞から神経細胞を直接誘導する際には、どのような転写因子が協同して働いているのか、どのような因子がその標的となっているのかに関して講演を行った。その結果、Ascl1という遺伝子が、ヒストンH2A.zを標的にしてクロマチンのリモデリングを引き起こす事によって、線維芽細胞から神経細胞へと直接誘導されることを紹介した。本講演は、今後直接誘導法を改良し、幅広く応用する為にキーとなる分子を明らかにしてくれる講演でした。
  2. 基調講演2では、理化学研究所(IMS)チームリーダーのJay Shin博士が、同じく線維芽細胞から直接神経細胞を誘導する為に、どのような遺伝子が有効的に働くのかを調べる系に関する講演を行った。Jay Shin博士は、多様な遺伝子を一度に導入しても、シングルセル解析の手法を用いて、実際に神経細胞に誘導された細胞だけを同定し、かつどの遺伝子がそれらの細胞に導入されたのかも同定する事によって、直接誘導神経の作出に有効な遺伝子をスクリーニングする手法を紹介された。本講演は、シングルセル解析がこのような例にも応用可能であり、今後も様々なブレークスルーを支える技術であることを確信させる講演でした。
  3. Short Talk1では、慶應義塾大学医学部生理学教室の石川充講師が、iPS細胞から神経幹細胞を介さずに直接神経細胞を誘導する系に関する発表を行い、迅速に電気活動を計測出来る神経細胞誘導系、および興奮性神経、もしくは抑制性神経特異的に誘導可能な系を紹介した。本講演では、本技術を双極性障害にも応用した例を紹介されており、今後の展開が楽しみになる講演でした。
  4. Short Talk2では、慶應義塾大学医学部生理学教室の前田純宏講師が、尿由来細胞から直接神経細胞を誘導出来る事、それらの細胞ではドナーの年齢が反映されている事、本手法を年齢依存的に発症する神経変性疾患に応用している事などを紹介した。本講演では、様々な神経変性疾患への応用可能性を紹介しており、続報が非常に楽しみな講演でした。

質疑応答は、パネルディスカッションとして各発表後に行われました。パネリストおよびaudienceから活発な質疑応答が行われました。

岡野栄之教授とPeter Kao教授(Stanford University School of Medicine, SLDDDRS)がClosing Remarksを行い、今回のWebinarについての総括が述べられました。また、次回の慶應-スタンフォード Webinarは日本時間の11月6日(土)午前中(米国時間では11月5日の夕方)に、Functional Genomicsをテーマとして、開催されるというアナウンスがなされました。ATAC-seqの開発で著名なHoward Chang教授も登壇されます。このように最新の研究知見の紹介と、若手・シニアとの活発なディスカッションがなされ、研究および教育的価値のあるWebinarとなりました。


SLDDDRS_5

【開催案内】
第5回 慶應-スタンフォード Webinar(2021.10.16開催)

【開催報告】
第1回 慶應-スタンフォード Webinar「Neurodegenerative Diseases」(2021.1.30開催)
第2回 慶應-スタンフォード Webinar「Organoids」(2021.3.20開催)
第3回 慶應-スタンフォード Webinar「Regenerative Medicine」(2021.5.29開催)
第4回 慶應-スタンフォード Webinar「Sleep」(2021.7.17開催)