【開催報告】第4回 慶應-スタンフォード Webinar（2021.7.17開催）
2021.08.202021年7月17日（土）に、第4回 慶應-スタンフォード Webinarを開催しました。今回のテーマは、Sleepでありました。Stanford School of Medicine, Department of Anesthesiology, Perioperative and Pain Medicine（SLDDDRS）、慶應義塾大学医学部生理学教室、Keio University Yagami Data Security Labが主催し、KGRI、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン (LINK-J)、科学技術振興機構 (JST)が共催しました。ウェビナー形式で約100名の参加がありました。
先ずは、西村俊彦教授（Stanford University School of Medicine, SLDDDRS）がOpening Remarksを行い、この慶應-スタンフォード Webinarの意義と今回のWebinarのテーマについて説明がなされました。
引き続き、3名の演者による講演が行われました：
- 基調講演１では、スタンフォード大学医学部のSleep and Circadian Neurobiology Laboratoryの西野精治教授が、高齢者における睡眠と日内リズム異常症におけるSirtuinsの役割についての講演を行いました。Sirtuin遺伝子は、長寿遺伝子とも言われ、S I RT1~7の７つの関連遺伝子から成り立っています。Sirtuin遺伝子産物はヒストンの脱アセチル化を行い、その活性化は個体の寿命の延長に関わっていると考えられています。この中で、S IRT１とS I RT６が日内リズムと加齢に関わっていることが示されました。特にS I RT６は、加齢とともに発現量が低下するとともに、遊離脂肪酸によって活性化されるので、加齢や高脂肪食による日内リズムの異常に繋がる分子メカニズムとして注目されています。
- 基調講演２では、筑波大学W PI睡眠研究所准教授（慶應義塾大学医学部生理学教室・訪問准教授）の坂口昌徳博士が、成体の海馬において新たに生まれる新生ニューロンのREM睡眠中のまばらな電気活動が、記憶の固定化（memory consolidation）において重要な働きをしているという興味深い結果について講演されました。睡眠（特にREM睡眠）は、脳の恒常性の維持において、システムレベルでは記憶の固定化、細胞レベルでは成体ニューロン新生、シナプスレベルでは棘突起（spine）の再構成において重要な働きをしますが、坂口博士の研究は、これらREM睡眠の役割の統合的理解を深める素晴らしいものでありました。
- Short Talk１では、慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学のBrian Sumali講師が、心拍変動（Heart Rate Variability）という心拍間の時間間隔の変動の生理学的現象を利用した新たしい睡眠ステージの解析法の開発について紹介しました。睡眠ステージの解析には、臨床ではポリソムノグラフィーという比較的大掛かりな装置が用いられますが、Sumali講師と満倉教授の研究グループは、BCGという簡易なDeviceを用い、睡眠ステージの解析法の開発に成功しています。既に２５人の健康人を対象にした研究により、このシステムを用いて正確な睡眠ステージ解析ができることが示されました。今後、さまざまな疾患の解析への応用が期待されます。
質疑応答は、パネルディスカッションとして各発表後に行われました。パネリストおよびaudienceから活発な質疑応答が行われました。
岡野栄之教授（慶應義塾大学医学部、Head of International Advisory Board of SLDDDRS）とPeter Kao教授（Stanford University School of Medicine, SLDDDRS）がClosing Remarksを行い、今回のWebinarについての総括が述べられました。また、慶應-スタンフォード Webinarは2ヶ月後にまた開催されるアナウンスがなされました。このように最新の研究知見の紹介と、若手・シニアとの活発なディスカッションがなされ、研究および教育的価値のあるWebinarとなりました。
【開催案内】
第4回 慶應-スタンフォード Webinar（2021.7.17開催）
【開催報告】
第1回 慶應-スタンフォード Webinar（2021.1.30開催）
第2回 慶應-スタンフォード Webinar（2021.3.20開催）
第3回 慶應-スタンフォード Webinar（2021.5.29開催）
