2040独立自尊プロジェクト

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研究概要

2040年には、日本の高齢者人口が約4,000万人に達する見込みであり、これに伴い労働人口の劇的な減少が予想される。これは、社会保障制度などの国家的基盤を揺るがす危機であるが、日本が世界に先駆けて超高齢化社会を克服し、新たな生活様式の世界標準を創出する機会とも捉えられる。本プロジェクトは、塾内外の研究者および企業と協力して、2040年の様々な社会課題に取り組むものである。
来たる超高齢社会における重大な課題として、社会保障制度の持続性や労働減少への対応が挙げられる。2021年から2023年にかけて行われた2040独立自尊プロジェクトでは、健康寿命の延伸に向けた行動変容の促進と継続が重要であることが明らかにされた。このため、健康寿命の延伸を目指す行動変容を促すデジタルプラットフォームの開発や、エコシステム(業界やプロダクト、サービスが互いに連携する大規模な収益構造)の形成を進めている。また、デジタルヘルスケア分野では、優れたセンシング技術の開発が不可欠である。身体的負担を強いる従来の金属製デバイスの代わりとなる、新たなセンシング技術の開発にも注力している。ここまでの研究成果として、フレキシブルで生体適合性の高い物質群をベースとした新技術である「ソフトマター」と呼ばれる物質群を活用した、身につけることすら意識させない人体と一体化するような透明皮膚デバイスの開発に成功し、世界的に注目を集めている。本プロジェクトではさらに、研究室レベルだけではなく、生活者等を対象とした実証実験に組み込むことを念頭においたデバイス開発を行い、上記のプラットフォームやエコシステムに組み込んでいくこと目指す。また、デジタルヘルスケアに留まらず、生活環境の改善も重要な要素であり、オフィスや住居、街といった環境のコントロールも研究・開発の対象としている。これらの取り組みにより、健康寿命の延伸を実現し、労働人口減少への対策を図ることが可能であると考える。
労働人口減少への対策としては、人工知能を搭載したヒューマノイドや介護ロボットの活用も重要な課題である。これらの技術開発においても、従来の半導体・金属ベースの技術を超えた新しいアプローチとしてのソフトマターや生命のように柔軟な動きを実現するロボットの開発が期待される。本プロジェクトは、これらの新技術を取り込んだ生活環境や社会システムの構築を目指し、2040年の社会課題の解決に貢献することを目標としている。このように、本プロジェクトの特徴は、社会システム設計に技術開発を組み込み実装していく点にある。同時に、技術やシステムが社会に受容されるかの検討も必要であり、一般市民が参加する市民会議や展示会を通して、市民とともに考え、真に社会に必要とされる研究開発を実現する。そして、食と健康をつなぐ水の見える化プロジェクトを組み込むことにより、食事と健康に関連するデータや情報の収集、分析、可視化が可能となり、個人の健康管理や食事習慣の改善に役立つ。食と健康に関するデータの利活用は、超高齢化社会における健康寿命の延伸に向けた重要な要素となる。また、水の見える化プロジェクトを通じて、水資源の効率的な利用や水の品質管理にも貢献できる。これにより、食と健康をつなぐ総合的なアプローチが実現し、2040年の社会課題に対処する一環として、さらなる成果を得ることが期待される。


2025年度事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

革新的ソフトマター統合プロジェクトでは, 人間の健康状態の常時モニタリングプラットフォームの開発とターゲット物質であるエクソソームの物性解明に注力していく. 健康寿命延伸の分野では,2024年度は身体面での健康に着目した健康モニタリングと行動変容介入をつなぐプラットフォームの実証実験を行なったが,2025年度は精神面の健康に着目したプラットフォームをオンライン上に構築し,実証実験を行うことを目指す. また, 水分子を用いた評価法(aquaplatform)を確立したため, 2025年度はこれを活用した実証を目指す.

■2025年度の新規活動目標と内容、実施の背景

革新的ソフトマター統合プロジェクトでは, 人間の健康状態の常時モニタリングプラットフォームの開発とターゲット物質であるエクソソームの物性解明に注力していく. 心身状態のモニタリング情報は対象者の行動変容,または問題の要因となる環境変容に十分結びついていない。そのため,対象者本人,周囲の人間や生活環境に介入するために,どのように情報を活用するべきかについてを,調査や実証実験により検討する。


2024年度事業報告

■当該年度事業(活動)計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

革新的ソフトマター統合プロジェクトでは, 人間の健康状態の常時モニタリングプラットフォームの一つとして人工皮膚電子デバイスの開発に注力してきた. 世界で初めて透明で装着していることを認識できない電子皮膚を開発し心拍の計測に成功した. また, 顔面に装着した際の眼球のモーションリアルタイム追跡にも成功した. また, 健康状態のモニタリングにおける重要なターゲットとしてエクソソームに着目し, エクソソームの単離回収しその物性を詳細に調べるためにデバイスを開発した. これらいずれもトップジャーナルに投稿中である. 健康寿命延伸を目指した研究テーマにおいては,健康状態のモニタリングと行動変容のための介入をつなぐプラットフォームを提案し,ワーキングペーパー(英語版:https://www.kgri.keio.ac.jp/working-paper/index.html)を公表した。また,当プラットフォームの価値および課題を検討するため,協力企業のオフィスでの実証実験を行なった。さらに,このプラットフォームの社会的影響のシミュレーションとシステム設計がSpringer社 Concurrent Engineeringの教科書のヘルスケア分野の一事例として選ばれ,現在執筆を進めている。分子生物学と生体シミュレーションを融合し、水分子の挙動から酸化還元反応を評価する手法を確立(DOI: 10.1002/open.202400278,知財申請済み)。本成果は、化学反応の概念を変えるだけでなく、半導体産業、農業最適化、疾患予兆など多分野への応用が期待される。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績

査読付き論文 20、Conference Paper 1、著書 5、Proceedings 1
その他 (working paper) 1
主たる公刊誌:
・Environmental Science: Nano
・The Journal of Chemical Physics
・Communications Chemistry
・Journal of Chemical Information and Modeling
・World Allergy Organ J
・International Journal of Agile Systems and Management
・Advances in Transdisciplinary Engineering
・Health Science Reports
・International Journal of Agile Systems and Management
・2024 IEEE SENSORS
・Scientific Reports
・ChemistryOpen
・Biophysical Journal
・Amino Acids
学会発表 (国内) 4件、学会発表 (国際) 2件、招待講演 4件

■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄

怪獣化するプラットフォーム権力と法 Ⅰ巻〜Ⅳ巻(慶應義塾出版会)刊行、イベント開催数8回(動員数約500名)、YOXO FESTIVAL出展



SDGs

1. 貧困をなくそう1. 貧困をなくそう
3. すべての人に健康と福祉を3. すべての人に健康と福祉を
5. ジェンダー平等を実現しよう5. ジェンダー平等を実現しよう
7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8. 働きがいも経済成長も8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
11. 住み続けられるまちづくりを11. 住み続けられるまちづくりを
13. 気候変動に具体的な対策を13. 気候変動に具体的な対策を
14. 海の豊かさを守ろう14. 海の豊かさを守ろう
15. 陸の豊かさも守ろう15. 陸の豊かさも守ろう
17. パートナーシップで目標を達成しよう17. パートナーシップで目標を達成しよう

プロジェクトメンバー

プロジェクトメンバー・所員について

◎印は研究代表者

◎ 安井 正人 医学部 教授 水分子の生命科学・医学、薬理学
山本 龍彦 法務研究科/KGRI 教授/副所長 憲法学、情報法学
泰岡 顕治 理工学部 教授 分子動力学
浅井 誠 KGRI 特任教授 ソフトマター
鳥谷 真佐子 東京科学大学環境・社会理工学院 准教授 システムデザイン・マネジメント、科学技術イノベーション政策、新規事業創出
河嶋 春菜 東北福祉大学総合福祉学部 准教授 憲法、医事法
加藤 靖浩 理工学部 特任講師 水分子、食(農業)と健康、Aquaplatform
新井 康通 看護医療学部 教授 老年医学、百寿者・超高齢者コホート研究
広瀬 毅 システムデザイン・マネジメント研究科 特任講師 システムデザイン・マネジメント、マーケティング、新規事業創出
満倉 靖恵 理工学部 教授 生体信号処理、知的信号解析、センシング・ノイズ除去・特徴抽出、睡眠工学
深見 嘉明 東京理科大学経営学部国際デザイン経営学科 准教授 プラットフォーム戦略、標準化戦略、コラボラティブイノベーション
当麻 哲哉 システムデザイン・マネジメント研究科 教授 コミュニティ(とくに医療・教育・地域)のための コミュニケーションデザイン、プログラム&プロジェクトマネジメント
福原 麻希 大学院付属システムデザイン・マネジメント研究所 研究員 医療政策、介護政策、システムデザイン・マネジメント、組織マネジメント、ダイバーシティ
河合 伸悟 東京情報デザイン専門職大学環境デザイン学部 教授 技術経営、社会システムモデリング・シミュレーション 、生活習慣病、行動変容、イノベーションダイナミクス 、システムデザイン、光ネットワーク
伊藤 翼 システムデザイン・マネジメント研究科 特任助教 システムデザイン・マネジメント、コミュニティデザイン、学習理論
伊香賀 俊治 理工学部 名誉教授 サステナブル建築環境デザイン工学、ライフサイクルアセスメント(LCA)、環境効率評価(CASBEE)、知的生産性、心身の健康
安藤 真太朗 北九州市立大学国際環境工学部建築デザイン学科 准教授 建築・都市環境工学
米澤 穂高 スマイルスピリッツ 代表 スポーツアナライジングコーチ、パフォーマンスアナリスト
山形 与志樹 システムデザイン・マネジメント研究科 教授 持続可能な社会、都市のレジエンス、都市・地域の脱炭素化、ビックデータ・AIの活用
尾上 弘晃 理工学部 教授 ナノマイクロシステム
安藤 景太 理工学部 准教授 流体工学、非線形音響学、キャビテーション
石上 玄也 理工学部 教授 フィールドロボティクス、宇宙探査、テラメカニクス
高橋 英俊 理工学部 准教授 センサ、MEMS、バイオメカニクス
加藤 健郎 理工学部 准教授 感性工学、ジェネラティブデザイン
村松 眞由 理工学部 准教授 固体力学
荒井 規允 理工学部 教授 分子シミュレーション,ソフトマター
松久 直司 東京大学先端科学技術研究センター/生産技術研究所 准教授 ストレッチャブルエレクトロニクス
小川 愛実 理工学部 専任講師 建築工学・住居学・福祉工学
星野 歩子 東京大学先端科学技術研究センター 教授 疾患生物学、エクソソーム
酒井 崇匡 東京大学大学院 教授 ソフトマター
片島 拓弥 東京大学大学院 講師 レオロジー、バイオマテリアル
小川 純 山形大学 准教授 ソフトマターロボティクス
森田 香菜子 経済学部 准教授 持続可能な開発、国際・国内ガバナンス
倉科 佑太 東京農工大学工学研究院 准教授 生体医工学
平野 秀典 理工学研究科 特任准教授 分子シミュレーション
小田 悠加 東京大学大学院 特任助教 生体組織変形
川久保 俊 理工学部 准教授 建築環境・設備、環境影響評価・環境政策、地域研究・まちづくり
山本 詠士 理工学部 准教授 生物物理学
鈴木 舞 東京電機大学未来科学部 准教授 科学技術の利活用が社会に及ぼす影響に関する科学技術社会論的検討