【採択者決定】2025年度 KGRI Challenge Grant(研究補助金)
2025.06.25Only available in Japanese
KGRIでは、昨年度(2024年度)からKGRIの新たなミッションをより明確に反映する「萌芽」「学際」「国際」「領域横断」「文理融合」分野における研究プロジェクトを対象とする補助金制度として、KGRI Challenge Grantを創設し、今年度(2025年度)はさらに人文学・社会科学分野の研究にも焦点を当てて公募を行った。
具体的には【OIST-慶應探索型】【文理融合/学際/分野横断型】【新領域/国際連携開拓型】【人文学/社会科学】の4つの研究カテゴリーを設定し、広く学内の広報活動を行ったことにより、幅広い分野の研究者より、意欲的かつ高水準の応募を得た。
厳正な審査の結果、下記6件の採択に至った。本補助金により、更なる国際的、領域横断的、または新領域の研究や人社系研究への発展、「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」でも研究協力を進めているOISTとのより強固な研究連携、ならびに外部資金の獲得などでより大規模かつ独創的な研究への発展につながることを期待したい。今回不採択となった応募者についても、義塾内外のさまざまな制度を利用しながら更なる研究の発展につながるよう、KGRIからも応援していきたい。
【採択者】
「疾患別温度応答機構の解明による細胞選択的凍結治療法の開発」
石井 龍之(医学部 助教)
「合成データに基づく静止手指画像を入力とした関節リウマチ疾患予測」
五十川 麻理子(理工学部 准教授)
「地域コミュニティにおける文化的な持続可能性実現」
佐藤 千尋(メディアデザイン研究科 准教授)
「日本語版LIBRE Profile-SFの開発と信頼性および妥当性の臨床研究」
佐藤 幸男(医学部 専任講師)
「喉頭全摘出後の患者における読唇技術を応用した代用音声の開発」
富里 周太(医学部 助教)
「宮古語池間方言の言語/文化の保存・継承を目指したデジタルヒューマニティーズ研究」
山田 彬尭(環境情報学部 准教授)
【採択者からのコメント】
石井 龍之
このたびKGRI Challenge Grantに採択いただき、大変光栄に思います。私はこれまで形成外科医として、臨床・研究の両面で「傷あとを残さない治療」の実現に取り組んできました。本研究では、細胞種ごとの温度応答性の違いに着目し、手術や薬剤に代わる第三の治療軸として、温度制御による細胞選択的治療の確立を目指します。初年度は低温刺激によるミトコンドリア変化に注目し、学際的連携のもと温度制御医療の基盤づくりを推進します。
(研究概要は、こちらをご覧ください。)
五十川 麻理子
この度は、KGRI Challenge Grantに採択いただき誠にありがとうございます。近年、急速に機械学習技術の発展が進む中で、早期の治療開始や遠隔診療の補助となることを期待して、一般の患者でも容易に取得できるカメラ画像のみを用いて身体の異常を発見する技術への期待が高まっています。本プロジェクトでは特に手指の関節リウマチの早期発見を目指した関節炎症の検出にフォーカスします。医学部のプロジェクトメンバーとも連携し、手法構築および遠隔診療への応用を目指して研究を推進していきます。
(研究概要は、こちらをご覧ください。)
佐藤 千尋
2025 KGRI Challenge Grantに採択いただき誠に光栄です。
少子高齢化や社会的格差が拡がる一方である昨今、各地域内で社会的に孤立してしまう生活者が後を絶えません。すべての人々に福祉を持続的に届けるために住み続けられるまちづくりを実現するには、地域ごとに様々な課題があります。本研究では地域コミュニティーにおける「世代交代」に注目し、地域共生社会の社会的持続可能性を模索します。首都圏中堅都市の社会福祉協議会などと密に連携し、各種サービス設計と実践およびそれを包含する社会的インフラの実践をしていきます。
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佐藤 幸男
この度はKGRI Challenge Grantに採択頂き、大変光栄に存じます。本研究では、熱傷患者さんの社会復帰の程度を評価する患者報告型アウトカム尺度『The Life Impact Burn Recovery Evaluation Profile』の日本語版を開発・検証することを目指します。本尺度が実用化されることで、患者さんは自身の状況を把握できるようになり、医療者は必要な支援を理解し、治療方針の決定に活かすことが可能となります。そして、患者さんの『生活の質』が向上することを願っています。
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富里 周太
KGRI Challenge Grantに採択いただき、ありがとうございます。癌の治療で声を失う患者さんは数多くいらっしゃいます。近年ニュースなどで使われるAI合成音声は、新たな代用音声として期待されているものの、キーボードでの打ち込みが必要です。私たちは読唇技術を使ってこの問題に挑みます。口元を撮影するだけで言葉にしてくれる、いわば「声を出さずに声が出るデバイス」の開発を目指しています。より利便性の高い代用音声が実現し、癌だけでなく声と言葉の疾患に悩む多くの患者さんにとって希望となる研究です。
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山田 彬尭
日本には、ユネスコが継承普及の必要性を指摘している消滅危機言語が、複数存在しています。私たちの研究対象は、そのうちの一つ、宮古語の池間方言です。この言語では、話者や文化継承者の高齢化が進み、神事の担い手不足が深刻化しています。ツカサンマという神職に就いていた方から、共同研究者のFujinaga-Gordon氏(カーネギー・メロン大学)に、そのドキュメンテーションが依頼されたことがきっかけで、本プロジェクトは始まりました。儀式のデジタルアーカイブ化を通じて、消滅危機言語の実証研究と文化継承という二つの目標の達成に取り組んでいます。
(研究概要は、こちらをご覧ください。)