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【採択者決定】2023年度 KGRIスタートアップ研究補助金

2023.06.28

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KGRIは、慶應義塾大学のグローバル化と学際研究を力強く推進するため、この目的に適ったスタートアップ研究に対して補助金を交付している。2019年度にスタートして以来、長らくコロナ禍で制限の多い環境での研究活動となっていたが、昨年度後半以降多くのセミナーや研究交流が対面でも行われるなど、リアルな動きが戻りつつある。本補助金を交付した研究プロジェクトにおいても、国際的・学際的な取り組みが成果につながる例も見られた。

本年度の募集においては、昨年度よりも様々な分野から応募頂くことを目指して、各学部研究科秘書室などに広報を依頼するなど募集要項をより広く周知したことに加え、KGRIの目指す領域横断的・国際的な研究の推進を意識して新たに研究キーワードを設定するなどの変更を行った。また、審査においては、対面で英語によるオープンヒアリング審査を実施した。周知への努力にもかかわらず残念ながら応募件数がやや伸び悩んだことや、申請内容ではKGRIの目指す方向性である領域横断性・国際性の重視という観点が必ずしも伝わっていなかった点を反省点として、今後の在り方を検討したい。

本年度は書類審査およびヒアリング審査を経て、いずれも新規の以下の3つの研究がKGRIスタートアップ研究補助金(200万円×3件)が採択された。本補助金が契機となって、採択課題が発展し、学内の領域横断的研究チームの組成が行われ、また国内外の研究者との連携の促進や更なる外部研究費の獲得につながることを期待したい。


【採択者】

「社会性と情動の学習 - 文化と身体的学習の側面から -」
 林 安希子(商学部 准教授)

「学際的アプローチによるCOVID-19後遺症の実態把握と治療戦略創出」
 南宮 湖(医学部 専任講師)

「心理学的・数学的アプローチによる多様な格子錯視の解明と表現」
 森 将輝(環境情報学部 専任講師)


【採択者からのコメント】

林 安希子

この度は、KGRI スタートアップ研究補助金に採択いただき、ありがとうございます。「社会性と情動の学習」はSocial Emotional Learning (SEL) の日本語訳で、「非認知能力」を育むことを目的とした教育です。多くの教育現場でSELが開始されている一方で、実施されているSELは文化・地域・人種といった「多様性」への考慮がなされていないとの懸念があがっています。本研究では、 SELにおける「文化」に適した実践の必要性を実証します。多種多様な環境の中で育つ全ての子どもたちに届くSELとなりますよう、研究を展開していけたらと考えておりますので、今後ともご支援よろしくお願い致します。



南宮 湖

この度は、KGRIスタートアップ研究補助金に採択頂き、誠にありがとうございます。このコロナ禍の中で社会と感染症の関わりに関して、これほどまでに考えさせられることはありませんでした。人権・倫理・経済・政治・歴史などあらゆる「社会」にまつわることが感染症と深く関連し、感染症の問題に対して医療によるアプローチだけでは不十分で、学際的なアプローチが必要不可欠であることは自明であります。私自身は、学生時代にグローバルヘルスに関心を持つ中で感染症に興味を持つようになり、その過程でアマルティアセン博士が唱える「人間の安全保障」を知りました。近い将来に、別のパンデミックが到来するとも予想されております。本プロジェクトでは学際的アプローチによりCOVID-19後遺症の病態解明を目指します。プロジェクトの着実な推進はもちろんのこと、未来を見据えて、このKGRIでの貴重な機会をスプリングボードとして、感染症を多角的に捉え直し、プロジェクトメンバーと共に学際的なアプローチを遂行できるコンピテンシーの発揮を目指したいと思います。


森 将輝

この度は、2023年度KGRIスタートアップ研究補助金に採択いただき誠に光栄に存じます。本研究課題は、格子錯視と呼ばれる現象のメカニズムを解明し、新たな視覚表現の開拓を目指しています。私たちは、実験心理学者と応用数学者が共同研究グループを構成し、心理実験と数理モデルの両面からアプローチする点がユニークであると考えています。視覚情報処理の不思議さを深く理解し、アート&デザインをより豊かに創造することができるような知見を蓄積できるように研究に邁進してまいります。


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