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【採択者決定】2020年度 KGRI新型コロナウイルス危機研究補助金

2020.07.06

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KGRIは、新型コロナウイルス感染症危機およびポストコロナ時代に関する領域を超えた研究を支援するため「2020年度 KGRI新型コロナウイルス危機研究補助金」の募集を行った。

コロナ禍で募集要項の周知徹底に制約があるなか、多数の応募をいただいた。これは学内の多くの研究者が新型コロナウイルス危機を最重要課題と考え、それに取り組む姿勢や関連する研究を目指していることを再認識する機会となり大変嬉しく思っている。今回の募集では、(1) 新型コロナウイルス感染の影響を最大限抑えるための緊急対策に向けた研究 (2) ポスト新型コロナ時代を踏まえた中長期的対策に向けた研究という2つを対象として募集した。また、単一の研究グループの研究のみでなく、慶應義塾の内外の複数のグループ (海外拠点も含む)にまたがる学際的研究を推奨することで公募した。

審査結果は、慎重な書類審査の上、オープンヒアリング審査を経て、最終的に、石井 誠さん(医学部 准教授)の「COVID-19症例の急性増悪/重症化に至る予測マーカーの探索と数理的定量化」、竹村 研治郎さん(理工学部 教授)の「実践的メドテックデザインプロジェクト〜緊急対応からの学びとポストコロナ時代」、中原 仁さん(医学部 教授)の「ブラジル日系人を比較対照とした日本人のCOVID-19リスク因子・保護因子の同定」、松尾 光一さん(医学部 教授)の「システム理論に基づく新型コロナウイルスPCR検査最適化慶應モデルの構築」の4件が採択された。応募のあった研究はどれも素晴らしい研究ばかりで、書類審査、オープンヒアリングにおいて内容をお聞きしても全てを採用しても良いのではないかと思うほどであった。その中でも、石井さんの提案は、COVID-19の症例において重症化する因子を事前に明らかにし、重要化を防ぐという、医療崩壊を防ぐ上で極めて重要なプロジェクトであることが評価された。中原さんの提案は、遺伝的背景が近い日本人と日系ブラジル人を比較検討することで、日本が医療崩壊を逃れたファクターXを探索していくという大変重要かつインパクトの高いプロジェクトとして評価された。松尾さんの提案は、シミュレーションと実証に基づくPCR検査の慶應モデルが提唱できれば、第2波のコントロールを行なっていく上で極めてインパクトが高いプロジェクトとなることが評価された。また、竹村さんの提案は、中長期的対策に向けた研究としてポストコロナに向けた医工連携エコシステムの構築について高く評価された。

以上、応募のあったすべての研究に非常に優れた部分が多々あったが、その中でもKGRIらしい研究であり、慶應義塾の内外の複数のグループ (海外拠点も含む)にまたがる研究であることも勘案し、4つの研究が採択された。さらに学際的で他のグループとも連携しつつ、ポスト新型コロナウイルス危機に関する研究を推進していただきたい。


【採択者】
COVID-19症例の急性増悪/重症化に至る予測マーカーの探索と数理的定量化
 石井 誠(医学部 准教授)
実践的メドテックデザインプロジェクト〜緊急対応からの学びとポストコロナ時代
 竹村 研治郎(理工学部 教授)
ブラジル日系人を比較対照とした日本人のCOVID-19リスク因子・保護因子の同定
 中原 仁(医学部 教授)
システム理論に基づく新型コロナウイルス「PCR検査最適化慶應モデル」の構築
 松尾 光一(医学部 教授)


【採択者からのコメント】
石井 誠
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KGRI新型コロナウイルス危機研究補助金に採択いただきまして、誠に光栄に存じます。私は慶應義塾大学病院のCOVID-19救命診療チームの一員として呼吸器内科医師として現在まで診療を継続しております。多くのCOVID-19患者様を拝見する中で、この疾患は当初は普通の感冒に見えても急激に悪化する例が多いことを現場でも肌で感じております。本研究では、理工学部満倉靖恵研究室との医工連携により、新たに重症化の予測式を構築し、「コロナ重症化予測システム」を確立し、救命率向上を目指してまいります。
写真:福永興壱教授(最前列左から4番目)、石井誠准教授(同5番目)呼吸器内科集合写真、20197月撮影)

竹村 研治郎
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この度はKGRI2020年度新型コロナウイルス危機研究補助金に採択いただき、大変光栄に存じます。新型コロナウイルスは終息の兆しも見えず、大学における研究環境も含めて社会構造の変革の必要性も叫ばれています。ある意味では、ウイルスがこれまでの社会に内在した課題を顕在化させたとも言えます。我々は新型コロナウイルス感染症の緊急対策である防護具や人工呼吸器の開発、マスク性能の評価データの公開などを通して国際社会における大学の役割を再考し、新たなメドテック研究・人材育成環境の構築を目指します。

中原 仁
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研究プロジェクトをお認めいただき光栄に存じます。地球規模のパンデミックの中、相対的に人的被害が少なく抑えられている日本に対して、地球の裏側にあるブラジルでは感染拡大が続いています。ブラジルは世界最大の日系人居住地であり、塾医学部は40年以上に渡り毎年医学生をブラジルに派遣するなど、日伯交流を深めて参りました。同じルーツを有しながらも、両国の文化や環境の相違によりCOVID-19がどのような違いを見せるのか、塾とブラジルはPUCRS(Douglas K. Sato教授)を拠点に情報分析を進め、そこから新たなCOVID-19との付き合い方を導きたいと願っています。
写真:Douglas K. Sato教授(左)と中原仁教授(右)(ブラジルPUCRSにて2019年1月撮影)

松尾 光一
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We would like to thank KGRI for the support and encouragement it has given for us to pursue this project with greater confidence. We are a team of scientists and researchers hailing from disciplines across Keio that is working with Keio University Hospital to implement a new system to carry out an appropriate number of diagnostic SARS-CoV-2 PCR tests to support the hospital during the COVID-19 pandemic. We are applying "systems thinking" and "systems engineering" to help us visualize, manage, and optimize our external clinical laboratory. It is a privilege to be able to work toward this goal with the backing of KGRI.


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