【採択者決定】2020年度 KGRIスタートアップ研究補助金
2020.06.26Japanese Only
KGRIは、慶應義塾大学のグローバル化と文理融合研究を力強く推進するため、昨年度に引き続き、今年度もKGRIスタートアップ研究補助金(200万円×2件)の募集を行った。
コロナ禍で募集要項の周知徹底に制約があるなか、多数の応募をいただいた。KGRIの取り組みが全塾的に浸透してきていることの1つの証左として、KGRIスタッフ一同とてもうれしく感じているところである。もっとも、応募の全体状況をみると、やや理系に偏っている傾向も見られた。「文理融合」を実質においても推進していくため、来年度は、キャンパスの垣根を超えたチャレンジをより一層期待したい。KGRIとしては、そのための広報活動等について、いろいろと知恵を絞っていくつもりである。
さて、肝心の審査結果であるが、スタートアップ研究補助金は、オープンヒアリング審査を経て、最終的に、西本祥仁さん(医学部・助教)の「オンライン診療を用いた認知症診療の有効性、安全性評価」と、松久直司さん(理工学部・専任講師)の「皮膚に融け込む伸縮性電子デバイスを用いたヘルスケアシステム」が採択された。応募のあった研究はいずれも大変興味深いもので、オープンヒアリング審査での質疑応答も非常に盛り上がった。そのなかでも、西本さんの研究は、認知症医療という、世界規模の社会的課題に対して、「オンライン診療」という実践的な解決策を示しつつ、画像情報等から、早期診断を可能にするアルゴリズムを構築し、各国・地域の状況を踏まえた比較研究を行うというもので、国際性や先見性を強く有していた。さらに、認知症に対する「社会の受け止め方」の差異に着目した比較文化論的考察まで視野に入れるという学際性も含まれていた。
伸縮性電子デバイスに関する松久さんの研究は、既に国際的に高い評価を受けていることに加え、海外研究者と強く実践的なパートナーシップが確立されているとのことで、さらなるグローバル展開を強く期待させるものであった。また、皮膚に融け込んだ伸縮性電子デバイスからのデータ収集は、プライバシーや人間の尊厳という観点から、法的・倫理的な課題を含みうるところ、本研究はこの点についても射程に入れ、今後、文系研究者との積極的なコラボレーションを試みつつ、社会に受容されるかたちでのプロダクト開発を推進していくとのことであった。その点で、学際的な視点も含まれているものと評価された。
以上、応募のあったすべての研究に優れたところが多く見られたものの、この2つの研究が「KGRI基準」をより高いレベルで満たしているとのことから、スタートアップ研究補助金の対象として、両研究を採択する運びとなったのである。採択者は、KGRIの精神ないしスタートアップ研究補助金の趣旨を忘れずに、上述した評価ポイントをぜひ具体的に実現していっていただきたい。
採択者において適切かつ有効に活用され、各研究の発展を支える一助になっていけば幸いである。
【採択者】
「オンライン診療を用いた認知症診療の有効性、安全性評価」
西本 祥仁(医学部 助教)
「皮膚に融け込む伸縮性電子デバイスを用いたヘルスケアシステム」
松久 直司(理工学部 専任講師)
【採択者からのコメント】
西本 祥仁
KGRI スタートアップ研究補助にご採択下さり大変光栄に存じます。我々、医学部神経内科は精神神経科、放射線医学総合研究所と力を合わせて、メモリークリニックの診療を行いながら、文理融合の精神を大切にIT技術を取り入れた次なる世代の認知症診療への道を切り開くことを目標としております。認知症オンライン診療に対して多様なアイデア、想いをもつ方々とKGRIのもとに集い合い、慶應義塾から世界へ、未来へ、すべての人類へ、形あるものを届けられるよう多くの壁を乗り越えていく所存です。引き続きご助力のほどをどうぞよろしくお願い致します。
松久 直司
私は2020年4月より、長年の夢だった自分の研究室をスタートしました。KGRIスタートアップ研究補助金に採択され、現在のまっさらな部屋が自分のアイデアを実現する場所に変わっていくのを大変嬉しく思っております。本補助金によって開発する新型ウェアラブルデバイスは非常に柔らかく伸縮するため、"皮膚に融け込む"ように装着することができ、長時間高精度の生体信号を取得できます。withコロナ・後期高齢化社会でも、高度な予防医療・遠隔医療を可能にするヘルスケアシステムを実現できるよう、一層の努力を重ねていきたいと思います。
プレ・スタートアップ研究補助金(募集要項)
スタートアップ研究補助金(募集要項)
【2019年度からの継続研究】
「音楽認知実験のためのグローバル・ネットワーク」
サベジ、パトリック(環境情報学部・特任准教授)