水素ガス治療開発センター
センター概要
エネルギー源としての水素の利用が、Economy、Energy、Environment、いわゆる3Eのトリレンマを解決する鍵として脚光を浴びております。私たちは、水素ガスの虚血再灌流障害を抑制する効果に着目して、水素ガス吸入療法が、救命救急医療現場の様々な局面において治療効果を発揮する可能性を示し、水素医療の具現化に向けた先導的・戦略的研究拠点としての役割を果たして参りました。今後、領域を越えた学学連携を強化し、さらに医療としての出口を見据えた産学連携を基に、非臨床・臨床一体型の研究を推進し、水素ガス、水素医療機器の薬事承認をめざすために水素ガス治療開発センターを設立しました。
キーワード・主な研究テーマ
水素医療、非臨床・臨床一体型の研究、獣医大学との学学連携
2020年度 事業計画
■2019年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標 (1)先導としての医療機器開発- 産学官連携により、水素発生装置、水素混合ガス供給装置を保険償還の得られる医療機器として認められる具体的な道筋を考えて参ります。
- 総合大学としての慶應の強みを強化し、理工学部等と連携協力を発展させたいと考えております(理工学部栄長教授との共同研究)。
- 水素ガスに関する様々な技術を持っている企業(大陽日酸株式会社、株式会社ドクターズ・マン)と協力して、彼らの技術を臨床の現場で活用していくアイデアを提供し、共同で知財を取る活動を積極的に行って参りたいと考えております。
- 科学としての実験動物に終始せず、臨床開発を明確な出口として前臨床試験を行って参ります。
- マイクロサージェリー技術を導入した再現性の高い精密な疾患モデル動物の作製を行ない、動物の管理、水素ガス吸入の薬効・薬理の評価を一連のシステムとして行ないます。そのために日本獣医生命科学大学との間で学学連携基盤コンソーシアムに基づく、連携実験室を活用し、組織的な実験動物の管理・運営を行ないます。
- 水素の薬効に関する新規分子機序、水素ガスの新しい用途特許の獲得をめざします。
- 研究者間での情報交換、新たな研究者のリクルートメントと支援を進めて参ります。
- 院外心停止蘇生後患者に対する水素吸入療法の有効性の検討する多施設共同無作為化比較試験を進める。
- 中間解析の結果を吟味して、薬事承認を受けるための道筋を明らかにしていきます。
水素ガス薬事承認に必要な薬物動態と薬力学データの収集を進めます。
例えば、ブタを用いて、単回吸入投与を行った場合の水素ガスの体内組織分布、薬物濃度の変化を明らかにする。
血液中の水素ガス濃度は一般財団法人日本分子状水素普及促進協会のガスクロマトグラフィーを用いて行う。
腸内細菌が大量の水素ガスを産生しているにもかかわらず水素含有飲料を経口摂取して本当に効果があるのか、に関して疑問が投げかけられている水素含有飲料の薬理学的効果を発揮するか否かを精密な動物実験で検証する。
2019年度 事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度水素ガス吸入によって心肺停止蘇生後症候群の患者の脳神経学的予後改善効果が認められるか否かを検証する多施設共同無作為化比較臨床試験は、臨床研究法による特定臨床研究になりましたhttps://jrct.niph.go.jp/detail/1945/jRCT/1 (認定番号CRB3180017)
2019年1月22日までの登録数は59例です(目標症例数は360例(水素吸入群180例,対照群180例_HYBRID II TRIAL http://www.hybrid2.org/ 院外心停止後患者に対する水素ガス吸入療法の有効性の検討)。
大陽日酸との共同研究でラット出血性ショックモデルにおける水素ガスの有効性の機序を解明してShock誌に報告しました。
同じく、大陽日酸との共同研究で5/6腎摘除腎不全モデルを作製し1日1時間の水素ガス吸入の高血圧に対する治療効果を検証しました。
株式会社ドクターズ・マンとの共同研究で血流循環停止後のマージナルドナー臓器を蘇生する技術(水素吸着合金キャニスターを用いて臓器保存液に水素ガスを圧入する方法)を開発しました。
この研究成果はプレスリリースを行っております。
公刊論文、学会発表、イベントなど社会貢献の実績
英文論文
- Kobayashi E, Sano M. Organ preservation solution containing dissolved hydrogen gas from a hydrogen-absorbing alloy canister improves function of transplanted ischemic kidneys in miniature pigs. PLoS One. 2019 Oct 1;14(10):e0222863. doi: 10.1371/journal.pone.0222863. eCollection 2019.
- Yamamoto R, Homma K, Suzuki S, Sano M, Sasaki J. Hydrogen gas distribution in organs after inhalation: Real-time monitoring of tissue hydrogen concentration in rat. Sci Rep. 2019 Feb 4;9(1):1255. doi: 10.1038/s41598-018-38180-4.
学会発表
- 2019 ORGAN DONATION CONGRESS 14 - 16 NOVEMBER 2019
- INTERCONTINENTAL FESTIVAL CITY, DUBAI, UAE
- Kobayashi E, Sano M. Organ preservation solution containing dissolved hydrogen gas from a hydrogen-absorbing alloy canister improves function of transplanted ischemic kidneys in miniature pigs.
- 第55回日本移植学会総会
2019年10月10日~12日
広島国際会議場
佐野元昭 水素ガスと移植医療 - 第46回 日本臓器保存生物医学会総会
2019年11月8日(金)
会場:ふくしま医療機器開発支援センター
佐野元昭 出血性ショックにおける水素ガスの有効性に関する検討 - 第46回 日本臓器保存生物医学会総会
2019年11月8日(金)
会場:ふくしま医療機器開発支援センター
佐野元昭 移植医療への水素ガスの応用 - プレスリリース 2019年10月2日
血流循環停止後のマージナルドナー臓器を蘇生-水素吸着合金キャニスターを用いた水素ガス保存液を開発-
メンバー
◎印は研究代表者
氏名 | 所属研究機関 | 職位 |
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◎ 佐野元昭 | 医学部 内科学(循環器) | 准教授 |
佐々木淳一 | 医学部 救急医学 | 教授 |
梶村眞弓 | 医学部 医学部 一般 | 教授 |
小林英司 | 医学部 ブリヂストン臓器再生医学寄附講座 | 特任教授 |
栄長泰明 | 理工学部 化学科 | 教授 |
野田啓 | 理工学部 電気情報工学科 | 准教授 |
本間康一郎 | 医学部 救急医学 | 専任講師 |
勝俣良紀 | 医学部 スポーツ医学総合センター | 専任講師 |
林田健太郎 | 医学部 難治性循環器疾患病態学寄附講座 | 特任准教授 |
遠藤仁 | 医学部 内科学(循環器) | 専任講師 |
片岡雅晴 | 医学部 内科学(循環器) | 専任講師 |
市原元気 | 医学部 内科学(循環器) | 助教 |
後藤信一 | 医学部 内科学(循環器) | 特任助教 |
大貫周子 | 医学部 救急医学 | 共同研究員 |
吉澤城 | 医学部 救急医学 | 助教 |
山元良 | 医学部 救急医学 | 助教 |
杉浦悠毅 | 医学部 医化学 | 専任講師 |
尾原秀明 | 医学部 外科学(一般・消化器) | 准教授 |
松田祐子 | 医学部 外科学(一般・消化器) | 特任講師 |
白川公亮 | 医学部 内科学(循環器) | 訪問研究員 |
鈴木昌 | KGRI | 特任教授(有期)(研究) |
袴田陽二 | KGRI | 訪問教授 |