システミック・ウェルビーイングのためのデザイン手法の開発

創造

研究概要

Takeyama

経済や社会が成熟し、人びとの幸福をGDPや所得だけではなく、ウェルビーイングによって評価する動きが世界的に広がっている。特に日本では働き方改革やコロナ禍への対応から、従業員のウェルビーイングとパフォーマンス(生産性等)の両立と向上が大きな課題となっている。本研究では、システミックデザインのアプローチを、行動デザインやサービスデザインと統合することで、従業員を取り巻くシステムへの介入によって個人と組織のウェルビーイングを高めるデザイン手法を開発する。特に、基本的心理欲求サポートとシステム・インターベンションの戦略的統合の観点から手法の開発と有効性の検証を行う。

2025年度事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

ステミックデザイン手法を応用し、組織の従業員とその主要業務を対象に、基本的心理欲求の阻害要因のシステミックな理解と、システムの変革を通じて業務の自律的動機づけとパフォーマンス向上を支援するデザイン手法を開発する。2024年度は、手法を一連のツールとともに整備したが、その複雑性の高さとプロセスの煩雑さが実用上の制約になることが判明したため、2025年度も本テーマにおいて研究を継続し、より実用性が見込める手法に発展的な改良を目指す。

■2025年度の新規活動目標と内容、実施の背景

特にシステム思考のツールの中でも導入の障壁が低く、汎用性の高いるシステム原型(アーキタイプ)を応用して、従業員と組織のパフォーマンス向上に資する基本的心理欲求の構造的な阻害要因の把握と対策を素早く導くデザイン手法を開発する。特に、システム原型と認知バイアス、基本的心理欲求を関連づけ、ナラティブ表現を新規に応用することで、構造的な分析と直感的かつ共感的な発想と対話を促す効果を期待する。


2024年度事業報告

■当該年度事業(活動)計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

2カ年の研究計画の1年目の成果として、第一にシステミックデザイン手法を応用し、組織の従業員とその主要業務を対象に、基本的心理欲求の阻害要因のシステミックな理解と、システムの変革を通じて業務の自律的動機づけとパフォーマンス向上を支援するデザイン手法を開発した。特に、因果ループ図と氷山モデルを応用して心理欲求を阻害する根本要因を視覚的かつ対話的に探り出すとともに、組織のシステム変革ビジョンと介入戦略を導き、実行計画に展開する一連のツールを設計し、業務への適用によって有効性を評価した。研究成果の一部は、国内のデザイン手法カンファレンスで報告し、有意義なフィードバックを得ることができたが、開発した手法の複雑性の高さやプロセスの煩雑さから、様々な実務療育での応用に際して、より直感的かつ簡潔に活用できるツールと手法への改良が課題として確認された。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

Systemic Design Day 2024(2024年11月開催)でのレクチャーおよびデザイン手法ワークショップにおいて、研究成果の一部を発表。
大日本印刷株式会社のサービスデザインラボの実務を対象に、開発手法の有効性を評価し、社会でワークショップとディスカッションを実施(2024年10月〜2025年3月)。

■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄

システミックデザイン手法を用いることで、自己決定理論のフレームワークを組織変革と結びつけて実践的に推進するための新たなデザイン手法を開発した。

2023年度事業報告 (旧テーマ「個人と組織のウェルビーイングを向上させるサービスデザイン手法の開発」での活動報告)

■当該年度事業(活動)計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

2022年度の活動において実施したウェルビーイング向上のためのデザイン技法とサービスデザイン手法の統合可能性の検討結果を踏まえて、新規の従業員ウェルビーイング向上支援デザイン手法を開発し、実際の企業組織の業務に関わる基本的心理欲求のサポートに応用することで有効性を評価した。活動計画では、適用する業務プロジェクトの選定、選定した業務プロジェクトに応じたデザイン手法の開発、業務プロジェクトを通じた開発手法の評価というプロセスを想定し、その計画に沿って本年度の活動を進めることができたが、手法検証に想定よりも時間を要したため、期間を2ヶ月延長した。研究成果として、開発した手法の特性や意義を国際学会と国内学会で報告しているが、本手法の実務への適用対象の設定と効果検証方法については課題も発見され、今後の研究展望としてまとめることができた。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

・The International Conference of Serviceology 2023にて研究成果を発表(国際)
・サービス学会国内大会 2024にて研究成果を発表(国内)
・Service Design Network Japan主催Service Deisgn Camp 2024にて従業員のウェルビーイング向上に資するデザインワークショップ開催(2024年3月都内)

■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄

2022年度の研究成果を発展させ、新規の手法開発を行った。
研究成果をThe International Conference of Serviceology 2023およびサービス学会国内大会 2024にて発表した。
Service Design Network Japan主催Service Deisgn Camp 2024にて多数の企業のビジネスパーソンを対象にワークショップを開催し、研究成果の発信と有効性評価を行った。


SDGs

3. すべての人に健康と福祉を3. すべての人に健康と福祉を
8. 働きがいも経済成長も8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
11. 住み続けられるまちづくりを11. 住み続けられるまちづくりを
12. つくる責任 つかう責任12. つくる責任 つかう責任
17. パートナーシップで目標を達成しよう17. パートナーシップで目標を達成しよう

プロジェクトメンバー

プロジェクトメンバー・所員について

◎印は研究代表者

氏名 所属研究機関 職位 研究分野・関心領域
◎ 武山 政直 経済学部 教授 経済地理、サービスデザイン