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【開催報告】インターネット時代における民主的コミュニケーション(2023.03.09開催)

2023.05.23

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慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI)2040独立自尊プロジェクト「プラットフォームと"2040年問題"」は、慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所(MEDIACOM)「インターネット時代のメディア法の行方III」プロジェクトと共同で、2023年3月9日に、講演会「インターネット時代における民主的コミュニケーション」を開催した。講師として、フライブルク大学教授・ドイツ連邦憲法裁判所元判事のヨハネス・マージング教授を迎えた。

20230309-pic1.jpg撮影:参加者

マージング教授は、2006年にフライブルク大学教授着任後、2008年にはドイツ連邦憲法裁判所判事に任命され、2020年に任期が満了した後は、同大学でトランスナショナルな観点からグローバル化時代の憲法の意義を研究されている。また、MEDIACOMの鈴木秀美教授と「グローバル化時代における基本権解釈の理論と実務」というテーマで共同研究を行なってきた。今回、マージング教授が日本学術振興会外国人招聘研究者として来日された際に、本講演会を実施した。

本講演会では、民主主義におけるコミュニケーションの重要性を議論し、現在のメディア環境に関する問題点と今後の展望が示された。メディアによるコミュニケーションは情報技術の進歩によって著しく変化し、国民国家における民主的コミュニケーションの形さえも大きく変えてきた。これにより政治的関心事項の個別化・国際化が促進され、国民国家における民主主義への脅威はますます増加している。講演の最後には、過去に回帰するのではなく、新しいコミュニケーションの時代にいかに民主主義を実現させるかを検討すべきであり、同時に、時代に即した新しい制度と規制を制定する必要性が強調された。

講演と議論の通訳は、KGRI2040独立自尊プロジェクトメンバーの栗島智明氏(埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授)が務めた。ドイツ憲法判例研究会の会員も多く参加した。

講演概要は以下の通り(所属・職位は実施当時のものです)。

講演概要(目次)

I. はじめに
II. 民主的なコミュニケーション集団の溶解
 1. 従来のメディア秩序(Medienordnung)の溶解
 2. 国家内部におけるコミュニケーション関係の相互離散
 3. コミュニケーション集団の外部への拡散
III. 危険な締め出し(Ausgrenzungen)〔の傾向〕
 1. 溶解するコミュニケーション関係のなかにある想像の「私たち(Wir)」
 2. 再・国民化〔国家化〕(Renationalisierung)による実体的な民主主義の巻き戻し?
 3. コミュニケーション空間の閉鎖?
IV. まとめと展望
 1. 過去に戻ることはできない――コミュニケーションによる紐帯が弱まる時代の民主主義を考える
 2. 規制の必要性