マインドフルネス&ストレス研究センター

 

センター概要

精神神経疾患による社会的な負荷は甚大であり、こうした課題への対応が求められている。そのため我々は、2013年にストレス研究センターを設立し、主に企業におけるメンタルヘルスの問題解決のために、効果的な復職支援プログラムであるKeio Employee Assistance Program (KEAP)を開発し、それを様々な企業で実施することで、復職後の就業継続率や労働生産性を改善してきた。しかし、企業や社会におけるメンタルヘルス向上には、メンタルヘルス不調者への介入だけでなく、一般の人々の真の健康の増進も必要であること、一般の人々のメンタルヘルスやウェルビーイングの増進には、マインドフルネスやポジティブサイコロジーといった新たな精神療法による効果が期待できること、そしてメンタルヘルスやウェルビーイングの増進には人々の行動変容が必要であるが、それにはテクノロジーと対人的介入とを有機的に連動する必要があることなどの課題が明らかになってきた。そこで、前身となるストレス研究センターでの成果を基盤に、マインドフルネスなど新たな心理社会的技法にまで射程を広げること、こうした技法とテクノロジーとの有機的な連携を推進することなどを通して、社会のあらゆる人々が、メンタルヘルスやウェルビーイングを増進できる社会の実現に寄与するために、慶應義塾大学マインドフルネス&ストレス研究センターを設立することとした。

2024年度事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

KEAPについては、複数企業から継続希望があり、これを継続していく予定である。
AMED事業で継続しているマインドフルネスの長期効果の検証については、論文のpublishを進める。
経産省および株式会社日本総合研究所との共同研究で行うwellbeingをベースにした効用値の尺度であるICECAPの日本語版スコアリングシステムの結果を論文化する。
文部科学研究(基盤B)にて実施した企業におけるマインドフルネス認知療法の労働生産性に対する研究結果を学会発表するとともに論文化を進める。
マインドフルネス&ストレス研究センターカンファレンスの開催を通して、マインドフルネスや産業精神保健の知見を広める活動に取り組む。

■2024年度の新規活動目標と内容、実施の背景

医療におけるマインドフルネス療法の実施については、ニーズは大きいものの、実施者が適切なトレーニングを受ける機会は極めて限られているのが現状である。こうした現状を踏まえ、2024年度から厚生労働科学研究費:効果的かつ有効性の高い集団精神療法の施行と普及および効果検証のための研究の一環として、医療者に対するマインドフルネス療法の基礎的なトレーニングプログラムの開発を開始する。
産業精神保健分野においては、KEAPの契約企業における最新の復職後の就業継続率データを用いて、就業継続に関連する因子などの特定を進める。

2023年度事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

KEAP事業を継続し、プログラムの改善と知見の蓄積を行った。
AMED事業のマインドフルネスの長期効果の検証については、解析が完了し現在論文化を進めている。
株式会社日本総合研究所からの受託研究であるICECAPの日本語版スコアリングシステム開発研究についてはこれを完了させ現在論文化を進めている。
文部科学研究「職場の生産性向上のためのオンライン簡易型マインドフルネス認知療法の有効性と費用対効果」については介入が完了し、解析を実施中である。
研修会(マインドフルネス&ストレス研究センターカンファレンス)を定期的に開催し、産業メンタルヘルスに関する知識の獲得や教育的なプログラムを提供した。
公文教育研究会の受託研究で、介護者のwellbeingに対する研究については、解析を実施中である。
以上の活動により、十分な達成度を得たと考えている。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

公刊論文数:39

  • 主たる公刊誌名:Psychiatry and Clinical Neurosciences、Frontiers in Psychology、PlosOne、JMIR 、精神科、精神科治療学、精神療法、Depression Strategy
  • 学会発表件数:国内13、国外1
  • 書籍:サイコーシスのためのオープンダイアローグ(翻訳)

イベントなどの社会貢献の実績

  • マインドフルネス&ストレス研究センターカンファレンス 9回(2023年5月、6月、7月、9月、11月、2024年1月、2月、3月(予定))
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

2023年度は、KEAP事業を継続し、知見をさらに蓄積した。
文部科学研究(基盤B)にて、企業におけるマインドフルネス認知療法の労働生産性に対する簡易型プログラムを開発し、RCTを実施し、介入を完了した。
文部科学研究(基盤C)にて、Virtual Realityを用いた不安症に対するマインドフルネス認知療法のプログラムを開発し、探索的RCTを開始した。
公文教育研究会の受託研究で、介護者のwellbeingに対する研究を継続し解析を実施している。
経産省および株式会社日本総合研究所との共同研究でwellbeingをベースにした効用値の尺度であるICECAPの日本語版スコアリングシステム開発研究を完了させた。
社会的貢献としては、慶應義塾大学マインドフルネス&ストレス研究センターカンファレンスを継続した。また慶應大学の学生、職員向けにマイドフルネス体験会を毎月2回継続的に実施し、のべ400人以上に参加いただいた。慶應義塾内外の400名以上の登録者を得て、マインドフルネスに関連した情報を発信するWeb"マインドフルネスコラム"の運用を行なった。さらに、学会や講演会等の機会を活用して我々の取り組みを広く発信した。

センター オリジナルWebサイト:

SDGs

3. すべての人に健康と福祉を 3. すべての人に健康と福祉を
8. 働きがいも経済成長も 8. 働きがいも経済成長も

設置期間

2023/05/01~2028/03/31

メンバー

◎印は研究代表者

氏名 所属研究機関 職位 研究分野・関心領域
◎ 佐渡 充洋 保健管理センター 教授 医療管理学、医療系社会学、精神神経科学
二宮 朗 医学部 精神・神経科学 共同研究員/精神神経科 医師 気分障害、不安障害、働く人のメンタルヘルス
山田 成志 医学部 精神・神経科学 特任助教 精神神経科学、産業精神保健
三村 將 大学 予防医療センター 特任教授 神経心理学、老年精神医学
満倉 靖恵 理工学部 SD工学科 教授 知能情報学、感性情報学、電子デバイス・電子機器
片山 奈理子 医学部 精神・神経科学 専任講師 精神神経科学
後藤 菜穂 医学部 精神・神経科学 研究員 精神保健福祉
澁谷 美穂子 医学部 精神・神経科学 特任助教 臨床心理学、産業精神保健
野口 海 医学部 精神・神経科学 特任准教授 精神神経科学、産業精神保健
田渕 肇 医学部 精神・神経科学 特任准教授 精神神経科学、神経科学一般、知能ロボティクス、理工系
是木 明宏 医学部 精神・神経科学 特任講師 精神神経科学、神経心理学
永岡 麻貴 医学部 精神・神経科学 特任助教 臨床心理学、産業精神保健
高森 智絵 医学部 精神・神経科学 特任助教 臨床心理学、産業精神保健
斎藤 文恵 医学部 精神・神経科学 特任助教 神経心理学、認知リハビリテーション
藤澤 大介 医学部 精神・神経科学 准教授 精神神経科学、サイコオンコロジー、臨床心理学
朴 順禮 看護医療学部  専任講師 サイコオンコロジー、臨床看護学、臨床心理学
淀川 亮 医学部 精神・神経科学 特任講師 労働安全衛生法、産業保健法学
稲葉 彩香 (2024/5/2-) 医学部 精神・神経科学 研究員