TCAD研究開発センター

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センター長 : 伊藤 公平(理工学部 教授)
活動拠点キャンパス : 新川崎タウンキャンパス

センター概要

TCAD (Technology Computer Aided Design) とは、物理・化学モデルに基づいたプロセス・デバイスシミュレーションにより半導体デバイス性能を予測し、半導体の物理的現象の解明や半導体産業の発展に貢献する研究分野である。その発展には本塾の研究者が大きく寄与しており、今後の基礎学問としての更なる発展と産業界における応用を先導するために、複数の民間企業からの共同出資による受託研究拠点として、TCAD研究開発センターを設置する。本センターは塾内のTCAD研究者の拠点であり、参加企業のTCAD研究者との連携を推進するTCAD連携ネットワークの中心としての任務を遂行する。半導体物理・半導体工学分野におけるTCAD研究開発の推進のために、大学と企業が連携した形で研究者を結集する。特にTCAD技術の発展のため、参加企業からのTCAD研究者と塾内の研究者とが密に関係できる環境を構築する。
また、産総研を始めとした公的研究機関や国内大学の研究者と参加企業を繋ぎ合わせる活動を行い、産学連携によるTCADを用いた研究開発の仕組みを構築する。さらに、TCADシミュレーションの半導体分野以外への利用拡大(例えば、原子力、宇宙工学、生物化学、薬学、医学など)によるTCADユーザーの裾野を拡げるとともに大学でTCADを実習教材として利用してもらい、学生に対して半導体物理の教育機会を提供する。最終的には、これらの研究成果を参加企業へTCADシステムとして提供し、国内産業の発展に貢献する。

キーワード・主な研究テーマ

TCAD、物理学、化学、応用物理学、電気工学、機械工学

2018年度 事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

基礎技術の応用展開として、領域分割計算においては 実際の市販デバイスに近い構造への適用を図る予定である。
具体的には、さらなる大規模化を目標として、デバイスの個数を増やし、さらに周辺回路の構造を加味した構造において、領域分割技術による、収束性改善および計算時間の短縮をはかる。
そのために、GPU(Graphics Processing Unit)コンピューティング技術に対応した、行列式ソルバーを検討する。また、GPU対応モンテカルロイオン注入シミュレーション技術において、実用可能なレベルの高速化をを目指す。
一方、SiCの物理モデルにおいては、SiC基板中の物理モデルを検討する。具体的には、SiC欠陥モデルの導入、SiC中不純物拡散モデルの検討を考えている。

■2018年度の新規活動目標と内容、実施の背景

SiCパワーデバイスのシミュレーション精度向上のため、 パワーデバイスへの応力・熱・電磁界など、外部からの影響を加味した物理モデルを導入する。そのため、マルチフィジックスに対応したシミュレータとTCADシミュレータのAPI機能を用いた連携解析技術の開発をおこなう。
また、大規模解析の高速化のために、領域分割技術のブラシュアップに加え、並列分散処理技術を導入を検討する。さらに、他のパワーデバイスへの適用も考慮したTCADシミュレータの機能拡充を目指す。

2018年度 事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

大規模・大領域・超高速シミュレーションに関する研究開発を実施した。また、市販のTCADシミュレータにない機能開発をおこなった。具体的な成果を以下に示す。

  1. 大規模・大領域・超高速
    領域分割技術:縦型MOS 36(6×6)セルと周辺構造のテスト例題を領域分割手法を用いて、一括計算できるようになった。 ハイブリッドメッシュ生成技術:従来の直交メッシュに代わり、立方体と直方体の複合メッシュを導入することにより、メッシュ数を1/8に削減、計算時間を1/13に短縮、使用メモリを1/6に削減でき、大規模、大領域の計算が可能になった。
    GPU(Graphics Processing Unit)を用いたモンテカルロイオン注入シミュレーション GPU技術を用い、Si基板でのイオン注入シミュレーションの計算時間が1CPUと比較し、100倍の高速化を達成した。その際、不純物濃度分布予測精度は、従来の計算のものとほぼ一致し、計算速度の高速化を達成した。
  2. API(Aplication Programming Interface)機能 API機能を導入することにより、市販シミュレーターでは対応の難しい、物理モデルや計算機科学技術の導入が容易になった。
    半導体物理モデルの充実を図った。
    • SiC向物理モデル、小信号解析、ピエゾ抵抗モデル、熱伝導モデル、比熱モデル計算制御機能向上を図った。
    • 収束判定機能、ニュートン法の制御、計算時間制御
  3. 拡散モデルの高精度化
    注入不純物種の追加 (F,C,N,Al)
    拡散モデルへの物理情報の追加
    不純物拡散計算のための変数の追加による高精度化(従来 8個→30個)
  4. ドキュメント整備
    保守手順書、プログラム解説書作成による、ユーザビリティーの向上
  5. TCAD Academic Council活動
    国内の大学、公的研究機関(50機関)に対し、API機能が利用できる新規TCADシミュレータのライセンス、利用者に対する講習会を開催し、新規物理モデルの拡張導入の容易化によるユーザー拡大、学生教育の機会を図った。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

  • 学会発表件数 国内 9件
  • 2018年6月6日 国内の大学、公的研究機関(計50機関)によるTCADシミュレータの利用協議会および研究会(TCAD Academic Council)を新川崎タウンキャンパスにて開催

■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

  1. 受託研究成果として、塾内、研究委託会社へのTCADシステムのリリース(6回) HyENEXSS V8,0K-HyENEXSS V8.5K
  2. TCAD Academic Councilのメンバーに対し、新機能を追加したTCADシミュレータのリリースをアナウンスし、TCADソフトウェアの国内研究機関でのさらなる利用拡大(ユーザの増加)、半導体物理以外の異分野(素粒子物理、宇宙工学、触媒化学、計算機科学)での利用拡大を図ることができた。
  3. 共同研究の成果により、市販TCADでは対応できなかった機能を追加することができた。

所員

所員(兼担)

伊藤公平 理工学部 物理情報工学科 教授
天野英晴 理工学部 情報工学科 教授
粟野祐二 理工学部 電子工学科 教授
石黒仁揮 理工学部 電子工学科 教授
内田建 理工学部 電子工学科 教授
黒田忠広 理工学部 電子工学科 教授
松本佳宣 理工学部 物理情報工学科 教授
大宮正毅 理工学部 機械工学科 教授
中野誠彦 理工学部 電子工学科 准教授
田中貴久 理工学部 電子工学科 助教(有期)
植松真司 理工学研究科 特任教授(有期)(研究)
伊藤浩之 理工学研究科 特任准教授(有期)(研究)
小田嘉則 理工学研究科 特任准教授(有期)(研究)

所員

秋山豊 先導研究センター 共同研究員
阿部真利 先導研究センター 共同研究員
大路譲 先導研究センター 共同研究員
小町潤 先導研究センター 共同研究員
酒井敦 先導研究センター 共同研究員
趙栄貴 先導研究センター 共同研究員
松澤一也 先導研究センター 共同研究員
南里江 先導研究センター 共同研究員
山形巌 先導研究センター 共同研究員