環境・エネルギー研究センター(SU)
センター長 : 和気 洋子(商学部 教授)
活動拠点キャンパス : 三田
センター概要
- 総合大学である慶應義塾が、グローバルかつ長期的な視点に立ち、サステナブルな国際社会の構築に向けて、とりわけ低炭素社会の実現のために、複雑かつ多様な研究課題に学部横断的かつ学術統合的に取り組み、その成果を人材育成につなげるための研究プラットホームの設置は必須である。
- サステナブル社会を実現するために地球環境問題をあらゆる側面から研究しなければならない。工学的な要素技術の研究開発はもとよりのこと、それらが社会的技術として評価され、新たな社会経済システムの創出にむけた文理融合的なメカニズムを解明し、政策提言に結びつけるための包括的な研究が必要である。
- 地球的課題としては共通であるが、そのアプローチには多様性が認められる。アジア・環太平洋に位置し、地域的な経済連携が進展するなかで、わが国の国際的なミッションと照らし合わせると、アジアを主軸とする国際連携が有効であり、その基盤となるネットワークおよびコンソーシアムの形成を目指す。
- 本年12月コペンハーゲンで開催される気候変動枠組条約締約国会議COP15に向けた広報活動として、慶應義塾の記事広告掲載に向け(RTCC対応)、環境・エネルギーをめぐる研究課題に対する本塾のメッセージをより強固に発信するためにも、学部横断的な研究プラットホームを早急に立ち上げ、まずは当該センターのスタートアップを申請する。
キーワード・主な研究テーマ
環境共生型設備システムデザイン 分散型エネルギー サステイナブル建築デザイン 環境と経済の共振性 革新的技術導入のコスト 世界貿易モデル アジア・ネットワーク アダプテーション・ネットワーク 環境人材育成等
2010年度事業計画
環境・エネルギーに関する人類の課題は,自然環境(地球環境)に調和可能な人間社会をどのように築くかという「環境共生・人間社会創造」の課題に帰着する。前年度に得られた多分野の研究成果の共有を基盤として、本年度の準備期間に「人材育成を大切にする文理融合の実学構築・発信」を目指す。そのための組織の拡充、グローバルCOEをはじめとする関連する塾内組織との情報交換および連携、そして活動資金確保を進める。具体的には、水、エネルギー、人、情報、交通、経済等々に関する地球規模の循環ダイナミズムを特徴とした環境共生・人間社会創造およびその評価・構築に寄与する。
アジアのサステナブルな発展軌道を研究視座として、アジアを主軸とする国際連携に積極的に取り組む。たとえばインド資源エネルギ研究所(TERI)との連携においては、低炭素技術の導入に関するさまざまな将来シナリオを作成し、シナリオごとに各技術の生産能力、各部門の生産量、雇用量、土地利用量、温室効果ガス排出量に関する時間的推移を、経済の相互依存性を考慮して構造的に解析するモデルの一つとして、日本・インド動学的産業連関モデル構築を目指す。そのための研究プラットホームを形成する予定である。
さらに、COP16などの国際的な政策集会での情報発信や一般市民への情報コンテンツ提供を推進する。加えて、前年度の慶應義塾対象の環境・エネルギー評価およびシミュレーション結果をふまえ、自ら率先という姿勢から慶應義塾のグリーンキャンパス創造に取り組む予定である。
2009年度事業報告
本センターでは、「新しい革新的技術導入の地球環境への影響,副産物への負荷,エネルギー効率などの評価,および技術の社会的側面として雇用,所得分配への影響評価」を主たる一つの課題として、まずは副産物関係の負荷分析において,経産省リサイクル推進課のデータを利用した事業所分布と産業連関表をリンクした研究をし、その成果を国際産業連関分析学会(ブラジル)において報告した。さらに主要途上国における環境エネルギー問題への接近として、インド資源研究所(TERI)との共同研究が開始され、インド経済に関するエネルギー使用表、CO2排出表を含む環境分析用産業連関表を最も詳細に推計した。これを農村・都市に分割し、雇用係数、土地利用係数を付加するという作業は、世界で始めてのものになる。
また、環境教育との関連において、一般市民や学生などを対象とした情報提供空間を日吉キャンパス協生館に設置し、環境・エネルギーの視点から、芸術および建築を含む視覚的情報発信を可能とした。研究実践として、脱温暖化社会に向けた政策オプション、エネルギー削減シナリオ、建築・都市環境評価、森林経営、環境教育、再生可能エネルギー実測データ取得、環境共生設備、住宅内のエネルギー消費予測、慶應義塾を対象としたエネルギー融通による二酸化炭素削減・エネルギー需要解析等々についてのシミュレーション実証結果を得た。国内地域および国際連携に関して,檮原市などの国内地域、中国、インドネシア、ベトナム等との共同研究指導および招待講演を通した協力を進めた。また、本センターから、2009年12月にコペンハーゲンで開催された気候変動枠組条約締約国会議COP15に参加し、海外の環境・エネルギーに関する活動を見聞すると共に情報交換を行った。
所員
所員(兼担)
和気洋子 | 商学部 | 教授 |
佐藤春樹 | 理工学部 | 教授 |
伊香賀俊治 | 理工学部 | 教授 |
村井純 | 文学部 人文人関系 | 環境情報学部 |
渡邉正孝 | 環境情報学部 | 教授 |
清水浩 | 環境情報学部 | 教授 |
大川恵子 | メディアデザイン研究科 | 教授 |
新保一成 | 商学部 | 教授 |
植田利久 | 理工学部 | 教授 |
岸本達也 | 理工学部 | 准教授 |
浜中裕徳 | 環境情報学部 | 教授 |
厳網林 | 環境情報学部 | 教授 |
梅垣理郎 | 総合政策学部 | 准教授 |
早見均 | 商学部 | 教授 |