スピントロニクス研究センター
センター長 : 伊藤 公平(理工学部教授)
活動拠点キャンパス : 矢上
センター概要
スピントロニクス(Spintronics)とは、物質の電気特性と磁気特性の双方を制御することにより得られる新しい物理現象を利用して、エレクトロニクス・マグネティクス・フォトニクスといった電子・情報通信産業のイノベーションを創成する新しい学術分野である。すなわち、基礎科学的イノベーションと産業イノベーションが協調的に発展をとげる極めて稀な科学技術革新分野であり、世界との競争と協調を意識しながら慶應が積極的に本分野の発展を先導する必要がある。
このような観点から、全国の研究者に門戸を開き、国公私立大学の先端的学術成果と共同研究施設といったリソースを統合する共同研究ネットワークを構築し,このネットワークを世界に拡げて我が国の優位性とプライオリティーを確保する体制を構築することを目的とする。
キーワード・主な研究テーマ
スピントロニクス 物理学 化学 応用物理学 電気工学
2018年度 事業計画
■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標
連携先の国内外の大学・研究機関とのネットワーク構築を拡大し、慶應との合同のワークショップの開催を継続する。またオンデマンド動画配信ウェブページ
(http://www.appi.keio.ac.jp/Itoh_group/spintronics/)を継続し、1)最先端の研究成果を専門家にタイムリーに届ける最先端ビデオプレゼン集、2)分野外の方々に対して最先端を走る研究者が何を目的に何を研究しているかを易しく解説するビデオ集、3)分野への入門者に対する一連の講義ビデオ集を日英両言語で用意すること、4)慶應テクノモール出展による広報活動を続行する。
また、センターとしての活発かつ先導的な研究活動を続行し、Nature等への論文発表を継続し、世界における研究の「中心(center)」としての活動を発展させる。
■2018年度の新規活動目標と内容、実施の背景
スーパーグローバル・創造のクラスタープロジェクト「量子コミュニティー」の柱として先端研究・教育プログラム・広報に関する本センター活動をさらに発展させる。また、競争的研究資金への積極的な応募と予算獲得し、新たな国内外の研究機関との共同研究を開拓することにより、スピントロニクス研究を強力に推進し、当該分野における慶大の国際的プレゼンスを向上させる。文部科学省「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」に選ばれたスピントロニクス学術研究基盤と連携ネットワーク拠点として、慶應義塾が得意とする量子スピントロニクス研究の幅を広げ、世界から研究者が集まる拠点としての存在感を確立する。
2017年度 事業報告
■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度
2013度より日本学術振興会・研究拠点形成事業・先端拠点形成型に採択され、2017度までの5年間、おおよそ1600万円/年の予算をもとに国際的スピントロニクス先端研究拠点としてのセンター活動を展開してきた。本事業ではミュンヘン工科大学、University College London、カリフォルニア大学バークレー校、スタンフォード大学、プリンストン大学、スイス連邦工科大学、New South Wales大学らとの共同研究を進めており、多くの論文が共同発表できた。また、東大、東北大、阪大と共同提案した「スピントロニクス学術研究基盤と連携ネットワーク拠点の整備」構想が、文部科学省「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」の新規プロジェクトの一つとして選ばれた。本先導研究センターは「量子スピントロニクス拠点」として位置づけられ、その整備のための予算が2017年度には2200万円付与された。この予算を使って矢上キャンパスに設けられた研究スペースにおいて「量子スピントロニクス拠点」としての機能をさらに強化するために、昨年度に引き続きセンター付きの特任准教授と技術員を雇用した。センター共催の国際会議を6月に福岡で、8月に松江で開催した。
■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)
Nature Nanotechnology, Physical Review Letters, Physical Review B, Applied Physics誌といった世界最高峰の学会誌に25編以上の論文をセンターメンバーが発表した。学会発表件数は国内50件、国際40件以上に上る。
センターが共催する2つの国際会議を開催した。一つは、9th International School and Conference on Spintronics and Quantum Information Technology (SpinTECH9)で2017年6月4〜8日に福岡県福岡市において開催され、約230名の参加者がスピントロニクス・量子情報に関する議論を行った。もう一つは、29th International Conference ond Defects in Semiconductors(ICDS-29)で2017年7月31日〜8月4日に島根県松江市で開催され、約300名の研究者が参加し半導体全般に関する議論を行った。これらの会議によって慶應義塾スピントロニクス研究センターのレピュテーションが大いに高まったと考える。
■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄
日本学術振興会Core-to-Coreプロジェクト先端研究拠点として選ばれたこと、量子スピントロニクス拠点として文部科学省「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想ロードマップ」にリストされたこと、2016年度に続き、2017年度も量子スピントロニクス拠点として2200万円の支援が国から得られたことが対外的成果である。また、スーパーグローバル・創造のクラスタープロジェクト「量子コミュニティー」において、本センター事業は4本の柱の1本として活動を発展させた。
研究内容としては、シリコン量子コンピュータ研究開発、ダイヤモンド量子センサー研究開発、スピン流・マグノン研究において世界をリードしていることが成果である。
所員
所員(兼担)
伊藤公平 | 理工学部 物情工学科 | 教授 |
栄長泰明 | 理工学部 化学科 | 教授 |
江藤幹雄 | 理工学部 物理学科 | 教授 |
斎木敏治 | 理工学部 電子工学科 | 教授 |
佐藤徹哉 | 理工学部 物情工学科 | 教授 |
白濱圭也 | 理工学部 物理学科 | 教授 |
能崎幸雄 | 理工学部 物理学科 | 教授 |
松本佳宣 | 理工学部 物情工学科 | 教授 |
的場正憲 | 理工学部 物情工学科 | 教授 |
田邉孝純 | 理工学部 物情工学科 | 教授 |
安藤和也 | 理工学部 物情工学科 | 准教授 |
神原陽一 | 理工学部 電子工学科 | 准教授 |
早瀬潤子 | 理工学部 物情工学科 | 准教授 |
牧英之 | 理工学部 物情工学科 | 准教授 |
山本直樹 | 理工学部 物情工学科 | 准教授 |
渡邉紳一 | 理工学部 物理学科 | 准教授 |