医工薬情報連携イノベーションセンター

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センター長 : 土居 信英(理工学部准教授)
活動拠点キャンパス : 矢上

センター概要

本センターでは、生命科学を礎に、人類の未来の発展を先導するという使命のもと、医学、工学、薬学、情報学等を含む様々な研究領域の融合を促進し「生命」の新たな地平を切り拓くために、学部・研究科横断的な全塾的組織としての先端バイオの研究拠点形成を推進することを目的とする。

キーワード・主な研究テーマ

ピューロマイシンテクノロジー、IVV法、C末端ラベル化法、創薬、癌幹細胞、骨髄腫、ゲノムネットワーク、メチルプロテオーム、抗体

2013年度 事業報告

■当該年度事業計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

以下の3つのプロジェクトを医・工・薬・情報の連携のもとで推進し、次のような結果を得た。

  1. 人工癌幹細胞を用いた分化制御異常解析と癌創薬研究
    本年度、土壌等のサンプルより単離した放線菌の培養液47株を新たに評価した。放線菌2011-K9株からC18逆相HPLCにより脂肪細胞への分化誘導の指標であるオイルレッドO染色に対して陽性を示す4成分を単離精製し、NMRや質量分析等を用いた構造解析により、イソフラボン類であるグリシテイン、カリコシン、ゲニステイン、プラテンセインを同定した。
  2. 一酸化炭素刺激による代謝変動分子機構の解明とメチルプロテオーム解析
    一酸化炭素シグナルに応じて代謝流量を変動させる律速酵素に関して、プロテオミクスによって得られたその発現の転写後調節因子を解析し、その制御機構の一端を明らかにすることができた。これにより一酸化炭素シグナル下における転写後調節による代謝リモデリングに対する新たな知見を得た。また、一酸化炭素と関連の深い翻訳後修飾である、アルギニンメチル化修飾のプロテオームワイドな解析に向けて、その特異的標的技術の基礎検討を進めたところ、良い結果を得ることができた。
  3. 多発性骨髄腫に対する新規治療薬の開発と分子機構の解明
    p53異常を有する骨髄腫に対する新規薬剤のフタルイミド誘導体とアニリノキナゾリン誘導体Q50を合成し、骨髄腫に対する増殖阻害作用を有することを確認した。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

公刊論文:Nat commun、Cancer Res、PLoS ONEなど10件
学会発表:国内10件、国際2件

■センター活動を通じて特に成果を挙げた事柄

特筆すべき成果として、理工学部と医学部との連携による次のような研究成果が挙げられる。
癌幹細胞のニッチの役割を解明する過程で、理工学部で開発した独自技術であるin vitro virus(IVV)法により、CD44と相互作用するタンパク質としてPKM2キナーゼを見出した。そして、CD44はその細胞内ドメインでPKM2キナーゼと相互作用することで、ペントースリン酸化経路を活性化しNADPHの産生を高めてGSHの合成を亢進させていることを明らかにした。これらの所見から、CD44はGSHの合成を介して細胞内外の酸化ストレスに対する抵抗性を高めることで、腫瘍組織の形成と維持に貢献していることが分かった。これらの成果は、癌の国際的専門誌であるCancer Res.に発表され(Cancer Res., 72, 1438, 2012)、高い評価を受けた。

所員

所員(兼担)

末松誠 医化学 教授
佐谷秀行 先端研(遺伝子) 教授
須貝威 薬学部 薬科学科 教授
服部豊 薬学部 薬学科 教授
土居信英 理工学部 生命情報学科 准教授
堀澤健一 理工学部 生命情報学科 専任講師(有期)
柳川弘志 理工学部 訪問教授