長寿化の下でのライフコースの変化

長寿

研究概要

Tsuya

本研究プロジェクトは、戦後日本における平均余命の伸長(長寿化)のトレンドと男女別パターンの変化を分析し、この長寿化の下でのライフコースの変化を、就学、就業、結婚と家族形成、および退職と老後の活動などの主要イベントのタイミングとシークエンスの変化に焦点を当て実証分析することを目的とする。さらに、長寿化の下でのライフコースの変化をより長期的な視点から検証するために、現代日本と18~19世紀の近世日本との比較分析を行う。

2024年度事業計画

■前年度より継続する活動内容について、継続する背景・根拠と目標

前年度は、18~19世紀の近世と現代日本を比較することにより、平均余命の変化のトレンドとパターンの長期的変化について分析した。さらに、男女の結婚行動の変化についても、多相生命表を分析手法として用いて、近世と戦後そして2070年までの将来の変化を推計し、比較検証した。わが国において、平均余命の伸長(長寿化)と結婚行動の変化(未婚化)は進行しており、これへの政策的・社会的対応は急務となっている。ここから、この研究を2024年度も継続することは有用かつ重要である。

■2024年度の新規活動目標と内容、実施の背景

2024年度は、前年度に学会発表した長期的視点からみた日本の結婚行動の変化についての4つの研究報告を4本の論文としてまとめ、学術誌で公刊する予定である。さらに、わが国のライフコース変化の重要な側面である家族形成について、18~19世紀の近世と現代を比較分析する。これによって、出生率変化(少子化)について長期的な視点から検討・考察を加えることができると期待される。


2023年度事業報告

■当該年度事業(活動)計画に対する実施内容、および研究成果と達成度

2023年度は18~19世紀の近世における男女の平均余命を推計し、戦後及び2070年までの将来推計による男女の平均余命の変化と比較・検討することにより、長期的視点からわが国の長寿化のトレンドと性別パターンの変化を分析した。さらに、男女の結婚行動について、結婚の多相生命表を共通の分析手法として用いて、18~19世紀の近世、戦後、そして2070年までの将来について推計を行い、ライフコースの視点から男女の結婚行動の長期的変化について検証・考察した。その成果を4つの研究報告にまとめ、2023年日本人口学会大会において企画セッション(「長期的視点からみた日本の結婚行動:多相生命表アプローチ」)を組織し発表した。この研究成果は、寿命の伸長の下で男女の結婚行動(配偶関係変化のタイミングと期間および遷移確率)がどのように変化したのか、そして今後どのように変化すると期待されるかについてライフコースの視点から定量的に示したものである。ここから、2023年度の研究成果ほぼ計画どおりであったと考えられる。

■公刊論文数(件数と主たる公刊誌名)、学会発表件数(国内・国際)、イベントなど社会貢献の実績(年月日、場所)

公刊論文数: 4本(Journal of Family Issues、Population、『厚生の指標』、『国民衛生の動向』)
刊行図書: 1冊(英文, Springer)
学会発表件数: 国内 - 6回、国際 - 4回
社会貢献の実績
 ① Plenary Lecture (titled "Trajectory & Prospects of Low Fertility in Japan") at the 10th KOSTAT-UNFPA Summer Seminar on Population(韓国中央統計局・国連人口基金共催 第10回国際人口サマーセミナーにおいて全体講義)(2023年7月24日)
 ② 令和5年度社会保障・人口問題基礎講座において「少子化と結婚の動向」をテーマに講演(2023年10月13日)
 ③ ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター研究会にて「配偶関係別生命表による人口分析とその応用」をテーマに講演(2023年11月30日)
 ④ 日本経済研究センターにて「将来人口推計を考える」をテーマに講演、など

■プロジェクト活動を通じて特に成果を挙げた事柄

2023年日本人口学会(第75回大会)の企画セッション(「長期的視点からみた日本の結婚行動:多相生命表アプローチ」)において発表した4つの研究報告を4本の論文にまとめ、2024年秋に『人口問題研究』の特集号として公刊することが決定した。また、平均余命の伸長(長寿化)と結婚行動の変化についての将来推計を研究プロジェクトの一環として行うことにより、よりいっそう長期的な視点からわが国の男女のライフコース変化を分析・考察することが可能となった。

SDGs

3. すべての人に健康と福祉を3. すべての人に健康と福祉を
4. 質の高い教育をみんなに4. 質の高い教育をみんなに
5. ジェンダー平等を実現しよう5. ジェンダー平等を実現しよう
8. 働きがいも経済成長も8. 働きがいも経済成長も

プロジェクトメンバー

プロジェクトメンバー・所員について

◎印は研究代表者

◎ 津谷 典子 慶應義塾大学 教授 人口学(特に出生力と家族変動分析)、歴史人口学、計量分析法
石井 太 経済学部 教授 人口学(特に死亡・寿命分析)、数理統計学
黒須 里美 麗澤大学 国際学部 教授 歴史人口学、家族社会学