KGRI Challenge Grant: ナノ粒子による難治がんに対する免疫療法の開発

創造

研究概要

Koike

難治がんに対する治療法として、免疫細胞を薬として使う免疫細胞療法が期待されている。特にキメラ抗原受容体(CAR)導入T細胞療法は、難治性の血液がんに対して高い治療効果を示し、実臨床に導入されている。しかし、大部分のがん種ではCAR-T細胞療法は一過性の有効性にとどまり、持続的な治療効果は得られていない。末梢血液中を循環する血液がんと異なり、腫瘍塊を形成する固形がんでは、本来がん組織近くのリンパ節でT細胞が共刺激、サイトカインなどの複合的なシグナルを伴う抗原提示(プライミング)を受けることで、がん組織に遊走する。本研究ではCAR-T細胞にこの仕組みを付与するため、複合的な免疫細胞活性化シグナルを誘導するナノ粒子を開発する。これにより人工的にCAR-T細胞に対するプライミング・腫瘍組織への遊走を行える抗原提示システムを開発し、再発・難治性の固形がんを標的としたCAR-T細胞療法の新規治療戦略の確立を目指す。研究代表者は、既に細胞膜小胞を用いた開発を通じてT細胞の活性化に寄与する免疫制御分子について知見を得ている。これらの分子群を研究協力者・松原が有する生体ナノ粒子設計技術を応用して、ナノ粒子コアを様々なサイズで調整しながら、最適なプライミングを行える人工粒子を合成する。

2024年度事業計画

■2024年度の新規活動目標と内容、実施の背景

研究代表者がこれまでに持つ細胞膜小胞のデータに基づき、研究協力者は人工ナノ粒子合成を進める。In vitroの実験系でT細胞の細胞傷害活性、サイトカイン分泌、増殖能などを指標に粒子の組成を最適化する。またin vivo腫瘍モデルで蛍光標識したナノ粒子を投与し、その持続性、組織移行性を評価しながら、粒子サイズなどを検討する。これにより、次年度に行う治療効果評価のための実験系確立を進める。

SDGs

3. すべての人に健康と福祉を3. すべての人に健康と福祉を
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう9. 産業と技術革新の基盤をつくろう

プロジェクトメンバー

プロジェクトメンバー・所員について

◎印は研究代表者

◎ 籠谷 勇紀 医学部 教授 腫瘍免疫学
松原 輝彦 理工学部 准教授 ナノ粒子工学
筒井 正斗 理工学部 助教 ナノ粒子工学