構造生命化学研究センター(SU)
センター概要
近年の急速な技術開発に伴って、従来の手法では困難であった生体高分子の構造解析に道が拓かれ、生命現象の理解や生体反応の制御が進んでいます。特に、タンパク質の構造情報を活用した創薬を通じて、病気を確実に治す個別化医療などが現実味を帯びてきており、細胞・個体レベルでの生命現象を原子レベルで理解するという「構造生命化学」研究がより重要視される時代に突入しています。そこで私たちは、医・薬・工の教員・研究者を糾合して学際的なチームを結成し、慶應義塾における構造生命化学研究を推進するとともに、より活性化させることを目指して、本センターを設立します。
2021年度事業計画
■2021年度の新規活動目標と内容、実施の背景■目的
構造生命化学は、ヘモグロビンなどのタンパク質に代表される生体高分子の立体構造を原子レベルで精密に解析することで、生命現象の理解とともに人の健康増進・疾患治療に寄与しうる科学的・社会的波及効果の大きな理工学分野の一つである。当該分野における近年の進展を鑑みると、生体高分子に関する原子解像度での構造情報が今後爆発的に増え、人工知能といった情報科学技術とタッグを組むことで、生命科学に革新がもたらされる時代に突入すると考えられる。研究大学を標榜する慶應義塾大学においても、構造生命化学を強力に推進する必要があるものの、構造解析の支援や応用的展開の触媒を担う窓口がないのが現状である。特に、タンパク質構造に基づく創薬に見られるように、医学・薬学領域との密接な連携や複数の学問領域を跨ぐ横断は必須である。そこで、構造解析経験のある研究者を含めた理工学部・医学部・薬学部の専任教員で、これまでの連携実績も考慮した「構造生命化学研究センター」を設置し、構造解析を支援するための基盤を速やかに構築することを目的とする。
■活動計画
●生体分子の構造解析に関する教育的セミナーの実施:慶應義塾では、X線結晶構造解析およびクライオ電顕による単粒子解析に関して、系統的な講義が極めて少ない現状を考慮して、学生はもちろん教員も対象にした教育的なセミナー(オンライン)を開催する(年10回程度、基礎から実際的な実験手順に至るまで)。
●構造解析の実施に関する「窓口」機能:生体高分子の構造解析には大型の研究設備(施設)の共同利用が必要となり、利用経験のない研究者にとっては申請などを含めて非常にハードルが高い。そこで、共同利用施設での勤務経験をもったメンバー(阿久津)が中心となって、構造解析の窓口として支援する。
●X線結晶構造解析・単粒子解析による生体分子の構造解明:生体内で酵素機能を発揮するタンパク質、重篤な疾患に見られる異常タンパク質、医薬品としての候補化合物がターゲットとする生体分子など、構成員が解明に取り組む生体分子について、実際に構造解析を進めることで、構造生命化学の研究基盤の整備に着手する。
SDGs
設置期間
2021/07/01~2023/06/30メンバー
◎印は研究代表者
氏名 | 所属研究機関 | 職位 | 研究分野・関心領域 |
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◎ 古川 良明 | 理工学部 | 教授 | 生物無機化学、タンパク質科学 |
阿久津 誠人 | 理工学部 | 専任講師 | 構造生物学、X線結晶構造解析、単粒子解析 |
藤本 ゆかり | 理工学部 | 教授 | 生物分子化学、有機化学、生体関連化学 |
末永 聖武 | 理工学部 | 教授 | 生物分子化学 (天然物化学) |
栄長 泰明 | 理工学部 | 教授 | 光機能性材料、ナノ粒子・薄膜、ダイヤモンド電極 |
高橋 大介 | 理工学部 | 准教授 | 糖質科学、有機合成化学、ケミカルバイオロジー |
安井 正人 | 医学部 | 教授 | 水分子の生命科学・医学、薬理学 |
三澤 日出巳 | 薬学部 | 教授 | 神経化学・神経薬理学 |
須貝 威 | 薬学部 | 教授 | 有機化学、合成化学、触媒・資源化学プロセス、生物機能・バイオプロセス、生物有機化学 |
花屋 賢悟 | 薬学部 | 専任講師 | 生物有機化学、生物無機化学 |
大澤 匡範 | 薬学部 | 教授 | 構造生物化学、生物物理学 |
横川 真梨子 | 薬学部 | 専任講師 | 物理系薬学、構造生物化学 |
原田 彩佳 (-2021/8/31) |
薬学部 | 助教 | 構造生物化学 |