【開催報告】CPSセンター:CPS研究会 知的財産法講演会 「バーチャル空間で活動するバーチャルヒューマンを通して再考するパブリシティ権 ~財産権/人格権の議論の新たな地平~(バーチャル空間におけるパブリシティとアイデンティティ ~バーチャルインフルエンサーを中心に~より変更)」(2023.06.15開催)
2023.07.14Only available in Japanese
2023年6月15日に韓国における著作権法、エンターテインメント法の第一人者であるHyung Doo NAM教授をお迎えし、「バーチャル空間で活動するバーチャルヒューマンを通して再考するパブリシティ権 ~財産権/人格権の議論の新たな地平~」というタイトルで講演会を開催した。(事前タイトルより変更)
参加者は、南館地下4階のディスタンスラーニングルームとオンラインあわせて、59名の参加があり、本学の教職員、学生に加えて弁護士含めて学外からの参加があり、講演のあとオンライン含め質疑応答も行われた。(講演者の関係で韓国からのオンライン参加もあり)
講演:Dr. Hyung Doo NAM
延世大学法科大学院 教授
慶應義塾大学大学院法学研究科 特別招聘教授(国際)
司会:君嶋 祐子
應義塾大学法学部・大学院法学研究科 教授
CPSセンター 所長
(講演内容)
1. バーチャル空間でのバーチャルヒューマンをめぐる法律学的争点
1.1 現象
1.2 パブリシティ権
1.3 表示·広告法(日、景品表示法)
2. 韓国におけるパブリシティ権議論の膠着状態と立法めぐる議論
2.1 退屈に進行しているパブリシティ権の議論
2.2 立法をめぐる議論
2.3 改正不正競争防止法に対する批判
3. 法的「空間」概念の変化とパブリシティ権の役割
4. 結論
4.1 日本と韓国の法体制の類似性
4.2 バーチャル空間に対するエンクロージャ(Enclosure)とパブリシティ権の役割
(要約)
近年、バーチャル空間で活動するバーチャルヒューマン、バーチャルインフルエンサーが登場し、商業広告に活用されるに至っているが、バーチャルヒューマンは、完全に創作された創作バーチャルヒューマンと実在する人間を模倣した模倣バーチャルヒューマンに区別することができる。
創作バーチャルヒューマンの複製による使用(利用)や二次的著作物の創作、人体的特徴・アイデンティティのみを無断で使用する行為における著作権や作成権(日:翻案権)の侵害、パブリシティ権の侵害などについて日本や韓国における事例を元に見解を説明した。
また、韓国におけるパブリシティ権議論の経緯や判例の説明があり、パブリシティ権の譲渡や相続などの事例をあげて、立法化を主張している。ただしパブリシティ権は、表現の自由を抑圧するものではなく、パブリシティ権で保護する場合と保護しない場合とを区別することが必要であり、もって法的安定性を確保することによって、ビジネス環境を構築することを意図している。
従来の法律はフィジカル空間を前提に発展しており、また発明や創作などの無体的な客体を権利として保護するのが知的財産法であるが、これらの間に位置する「拡張現実」、「仮想現実」といった仮想世界は、両者の性格を有している。仮想空間における盗用や攻撃などの侵害行為に対しては既存の物権、財産権の適用は限界があり、知的財産法やパブリシティ権のアプローチが問題解決の糸口になるだろうと述べた。
2023年6月15日 三田キャンパスにて実施
※所属・職位は実施当時のものです。